救いの声



 もうどれくらい、倒しただろう。マネルの死体は刻一刻と増えていった。こちらの能力をコピーするでもなく、特別硬いわけでもないそれらからの攻撃はほとんどない。足を掴まれたり、腕を掴まれたり、せいぜいその程度だ。でも数が多すぎる。魔力が底をつきかけている、これじゃあいくら魔力があっても足りない。ここにいるのを全員倒せというのだろうか。時間が経つにつれて指数関数的に増えているような気もするのだ。
 息も上がってきた。足がふらつく。どこかで休憩して魔力を回復しないとこれじゃあ……。でもここで食い止めなかったらこいつらはこの森を出ていくだろう。そうすればどう考えても街や村に迷惑がかかる。生徒たちもそれぞれがそれぞれの対象を倒しているだろうし、ああ、もう。
 ぐちゃぐちゃになる頭の中を振って、まるで陽炎のようだとぼんやり考えた。同じ顔、同じ顔、同じ顔。まるで僕までマネルのうちの一人になってしまったかのような不安感。同じ顔……。
 静かにその場に着地する。クナイを振り回していた腕もだいぶ疲労が溜まってきていた。どこでできたのか、所々引っかき傷のようなものもできている。
 そいつらはまるで僕の死体のように、あー、とかうー、とか唸りながら近づいてくる。僕の腕を掴む。僕の肩を掴む。僕の足を掴む。迫る、迫る僕の顔。
 頭がぼーっとする。原因は間違いなく疲労だった。一度止まってしまった僕の腕はもう動くのを拒否している。逃げろ、避けろ、と頭のどこかで思っているのに足もその信号を拒否した。
 生を諦めた訳ではなかった。こいつらに殺されるようなヘマはしない。僕がおもちゃになって下に被害が行かないなら、戦うより楽だと考えただけだ。
 けれどその思考を、その声は遮断する。
「茉紘!」
 僕の体にまとわりついていた僕の腕、腕、腕という腕が離れていく。背中にピタリとつけられた手からはトクトクと注ぎ込まれるように魔力が伝わってきていた。同時に疲労感で重かった腕も、足も、軽くなっていく。
「アル……」
「どうなされたのですか、あなたらしくありません」
 表情はほとんど動いていないのに、その言葉には心配の色が見えていた。僕らしくない。確かにそうだ。これしきの疲労と、数で何をへこたれているんだろう。
「……ごめん、ありがとうアル」
「いいえ。……これは、だいぶいますね」
「うん。手伝ってくれる?」
「ええ。ですが……」
 彼女の腕が背後の斧を取る。同時に魔力の膜を張ったシールドが僕とアルの周りを守るように取り囲んだ。移動しやすいよう、僕には小さなシールドが二つ、周囲を回っている。
「数が、いささか多すぎるかと。この先に人の気配がします。合流しましょう」
「ん、わかった。じゃあ、道、切り開くよ」
 まだ増えているのではないかと思うほど、僕と……少しだけ、アルの姿を写し取ったマネルの群れに構えた。アル、背中は任せたよ。肩が少し触れただけできっと伝わったと思いたい。

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