「……は?」
素っ頓狂なレイの声が響いた。その際に集中力が切れたのか繰り広げていた魔法が途切れる。
「これ持って、飛んでください」
「手で触れたら爆発しますよね」
「ええ。浮かせて持っていってください。クオリア! 戻って」
クオリアのおかげで最初の頃よりだいぶマネルの数が減っていた。茉紘を抱え、レイの方へ残りの魔力を譲渡する。戻ってきたクオリアがわからないという顔で私とレイを見比べていた。
「早く。さらに増えていきますよ」
「いや、たとえ浮遊魔法でも魔法を使いながら飛べないのを知っているでしょう」
クオリアに茉紘を預ける。雑に肩に担いだクオリアを見て、あとで茉紘に怒られるだろうな、と無表情に思っていた。
スキャンモードに変更する。レイの体内に残っている魔力はまだ十分にある。レイの技能も十分にあった。あと必要なのは、彼の勇気だった。レイが今まで翼の操作と魔法の操作を同時に成功させたことはない。もちろんわかっている、わかっているが、ここで成功させてもらわないと死人が出るだろう。
「私たち三人は衝撃波の届かない位置まで移動します。レイは上空からこれらを投下してください。この中で同時に浮遊魔法を使える人間はレイ以外にいません」
二つの爆弾はふつふつとその解放の時を待っていた。せっかく減らしたマネルたちも徐々に増えてきている。早く飛ばさないと。
「俺、残ってようか? もし撃ち漏れがあったら……」
「その時はレイがやればいいのです」
クオリアは不安そうにレイを見た。おそらく、できないと思っているのだろう。茉紘がここまで身を呈した作戦を失敗で終わらせたくはないのだ。わかっている。
数字は嘘をつかない。レイはできる。私はそう信じている。
「アルミリア、俺は」
「レイ。あなたはもう、魔法を使いながら飛べます。自覚していないだけです。ちゃちな恐怖心が邪魔しているだけです」
反論に言い淀んだレイの頭を撫でた。だいぶ背が高くて背伸びをしなくてはならなかったが、こうしてみるとレイは子供のようだった。
「今回は簡単な浮遊魔法だけです。……できますね?」
できなかった時は最悪、私が飛び込めばいい。心臓部のマナを使い切ればレイを浮かばせることくらいできるだろう。祈るように目を見つめると、レイはコクリと頷いた。
クオリアは何も言わなかった。茉紘を担いだまま歩き出す。
「
解放詠唱を唱えたレイの、体の中で回路が変わった。魔力が溢れ出す。蓄えていた魔力はこれほどだったのかと驚いた。もう何も言わない。彼ならこの程度、きっとできる。
「きっちり三十秒、経ったら落としてください」
クオリアの後を追った。すぐ追いついて背中を叩き走り出した。あの爆風が届かないところまで行くには三十秒でも足りないほどだ。クオリアもわかっているのか力を振り絞って必死に走っている。
心の中できっちりと三十秒を数えていた。木で埋もれていたはずの空が見える場所に到達した、その時。爆音と同時に木に止まっていた鳥が飛び立つ。振り返って空を見上げると、そこには微笑むレイが浮かんでいた。
ほんの少しだけ前に進めたレイと、信じて戦えた三人の話。
マネルうちの子共闘、最後までお付き合いくださりありがとうございました。