「無理だ」
「いいえ、これをやらなければ迅速な討伐は不可能です。データ上、これが可能な魔力はクオリアに残っていますし、素質は備わっております」
フェーズワン。まずは広範囲に届く攻撃手段を用意すること。この時、のちの作戦に響くためレイはほとんど使えない。
そこで、私の斧を活用する。ちょうどクオリアは金属性かつ、魔力が一番余っている。私の斧を分解し、細かい刃物に再生成させれば茉紘にもクオリアにも武器が増える。私の無属性魔法で飛ばすことも可能だ。
「やったことねえし、俺は動く方が……」
「ごちゃごちゃいってないでさっさとやんなさいよ、時間ないでしょうが!」
茉紘に叱責されるとどうやらクオリアは弱いようで、渋々といった感じで私の斧に手をかざした。クオリアがほとんど魔法を使ったことがないのも知っている。彼女の鉄パイプに展開された魔法もとても単純なものだ。魔法学なら一年生の最初の方に習うものだ。
といっても、分解して再生成というのも実際一年生で習うだろう。授業を聞いていない、実践に使用していない、そんなことは知っているがやってもらわなくちゃ困る。
「茉紘、クオリアが武器の生成を行うまで陽動をお願いします」
「陽動突っ立ってどこにどうすりゃいいわけ?」
「中心に集めてください。シールドも張り直します」
「了解」
短く呟くとすぐに茉紘は飛んでいった。だいぶ回復したのだろう、動きにブレはない。心配そうに茉紘の後ろ姿を見送ったレイは私に向き直る。
「もう一度穴埋め作戦は無理だ、俺には」
「わかっています。別のやり方で一網打尽にします。レイは魔力を蓄えていてください。しばらくは休憩です」
問答無用で私の横に座らせる。不満げに唇を少し尖らせていたが、知らないふりをした。
クオリアに目を戻す。歯を食いしばりながら金属を細かく分解していた。私の身長ほどあるそれを、いきなり分解して鋭い刃物に変えろというにはあまりに酷だとわかっているが。
「落ち着いてください」
クオリアの背に手を置き、魔力を少し分け与える。スムーズに動かせるようになったらしい。それは端から少しずつ、針というには大きすぎ、ナイフというには小さすぎる刃物ができあがっていった。
「その調子です、クオリア」
彼女が生み出した針を無属性魔法で浮き上がらせる。コントロールは元から起動が計算された魔法だから完璧だ。一つずつ、クオリアの生み出したものをマネルの頚動脈に刺していく。バタバタと血を吹き出して倒れ始めたマネルたちに、異変を感じたのか茉紘がこちらを振り向いた。
「ちょ、なにしてんの?」
「援護です。気にせず数を減らしてください」
ちょうど右手のクナイで隣のマネルの頭を突き刺した茉紘が興味なさげに頷いた。
この作戦を行う上で、この場にいるものたちの魔力は少なすぎる。魔力による殺傷力がなさすぎるのだ。だったら数を減らせばいい。
別ハードでカウントしていたが、毎秒三から五体は増えているようだ。増えていく分も合わせてさらに減らしていくのはきっと骨が折れるだろう。だから武器は多い方がいい。
「あと……もう、少し……」
クオリアには珍しくずっと無言で行なっていた作業がようやく終わりを迎えていた。その場には千切りされた斧が並んでいる。
「できたー!」
最後のひとかけらを鋭利な刃物にやり終えたクオリアが万歳をしてそのまま後ろに倒れこむ。瞬時に体内の魔力、体力等確認すると、使い方が下手なのかだいぶ魔力が減っていた。彼女にはこれからもっと練習してもらわなくてはならない。
「体、動かせますか」
「殴るだけなら」
「では茉紘と交代してください。一体でも多く、その場にいるマネルを殺してください」
体の反動を利用して起き上がったクオリアが、嬉々としておう! とかけていった。フェーズワン、クリア。さて次からが本題だ。