ほのぼのマネル討伐02



「男の子やったんな……」
「まだ言ってんの?」
 森の中を二人で歩く。僕よりはるかに背の高いセレネは僕の歩幅に合わせてくれているようだ。
 どうやら同行者とはぐれてしまったらしい彼女は、一人でマネルやミラージュの見破りができず困っていたのだという。見破りができないなら一人で戦うこともできないだろうし、どうせなら僕がその同行者の元まで送っていこうと提案した次第だ。
 と言っても、その同行者がどこにどういるのかわからないからなんとも言えないのだが。
「よく間違えられるから別にいいのに」
「でも失礼なこと言ってしまったんやろ?」
「全然。僕かわいいから間違えるの当然じゃん?」
 大抵、引くか苦笑いするか軽蔑するかの反応なのだが、妙に納得されてしまった。この人は優しいんだろう。
「セレネって長いことテトイにいる人でしょ」
「わかるかえ」
「うん。なんか見たことある。僕も百年以上ここにいるから」
 記憶の糸を手繰り寄せるように少し考えこんだ彼女がピンときたのかああ! と声をあげた。でしょ、と目で尋ねるとうん、と答えてくれる。
 学園の可愛い子は一度見ると頭に印象が残る。二度見ると顔を覚え、もっと頻繁に会うようになると名前を聞き出して覚える。そういうものだ。
 セレネを見たとき、目が綺麗だと思った。真ん中で分けられた前髪の間から翡翠と白の混ざったような瞳が覗いている。あの目で思い出したようなものだ。どこかで見たことがある、と。
 森の中は風による木々のざわめきと、少し遠いところから聞こえる生徒と魔物の戦闘音だけが響いていた。僕とセレネの会話も途切れ、静かにただ黙々と歩く。人の気配はなかった。
「静かやっちゃ……」
 次の瞬間、茂みが動いた。とっさに太ももからクナイを取り出してその方向へ投げた。魔法の補助が自然と働いていたのか、それは吸い込まれるようにマネルの眉間に突き刺さった。
「嵐の前の静けさってやつ?」
「こんなにおったんやなぁ……」
 またぞろと出てきたマネルたちに背中合わせで構えた。全く迷惑な魔物だ。平和に歩いていたのに。一体どこから生まれてくるんだろうと思えるほどに多いマネルたちにうんざりした。どうやらセレネも同じようで短いため息をついている。
「さっさと片付けて人探し続行しよ」
「そうやね」
 その言葉を合図に動き出した。僕たちを襲ったことを後悔させてやる。

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