「陽動します。よく分かりませんが穴の準備を」
「分かりました」
彼女が跳躍し、土壁の上を通る。赤丹のあ! という声が聞こえ、炎の燃え盛る音が聞こえた。長いこと戦っていればいるほど彼女の金属は溶けて行くかもしれない。早いとこ終わらせてしまおう。
「
Gubbie della terra」
土壁をなくす。とっさに見切った赤丹の体の周りの土を盛り上がらせ、一度彼を土の檻の中へと閉じ込めた。金属性の彼女はいても、ちいはいない。蓋をするものは何もない。だからこそ、できるだけ深い穴を開ける必要があるのだ。細く、深い穴を。
「邪魔を……するなァ!」
ひときわ大きな炎の球が、赤丹の振り返りざまこちらへ飛んだ。早い。次の魔法を繰り出そうとしていたせいで防御すら間に合わない。もろにあの炎を負えば、戦闘続行は……! 眼前まで迫ったその熱を覚悟した瞬間。
「……え?」
「女ァ!」
「今です」
俺の体を、彼女が担いでいる。あれだけ短い時間でここまで戻ってきたのだろうか。否、190を超える身長の男を抱えられることにすら、驚いていた。
「早く!」
「あ、ああ。……
Pioggiove il suolo」
赤丹の動きが止まっている間。その足元に彼一人が入れるほどの穴を掘った。深さはおおよそ五メートルほどのイメージで、すぐには上がれないように。
赤丹のお前らー! という叫びが小さくなりながら、彼の姿は穴に吸い込まれていった。彼を囲っていた檻を崩し、闇のような深い黒の穴がそこに残る。
「さすがに蓋はできませんから、この間に逃げましょう」
「……」
無言で動きを止めた彼女が何か言いたげに口を動かした。その間抱えられたままのせいで周りの目が恥ずかしい。
「すいません、助けていただけたのはありがたいのですが、おろしてくださいますか」
告げると彼女は俺を降ろし、ぺこりと頭を下げて混戦のフィールドへとかけていった。そういえば彼女の名前を尋ねるのを忘れていたことを思い出したが、その銀髪はもうどこにもない。
修練棟 16時の部
赤丹さん(@crjuil)、ラグナちゃん(@homu_o)お借りしました! 赤丹さん、頑張って這い上がって……!