赤と銀

02 - 茉紘
修練棟 16時の部




 その時、視線の端に銀が映った。黒いアイマスク、足元までのびた銀髪、そして華麗にリュメールの背後から迫る足に備えられた剣。それはあまりにも不意打ちだった。彼女の剣はためらうことなくリュメールの首元を狙っている。すんでの差で避けたリュメルがその剣を魔法で止めた。宙に右足が浮いた状態になった彼女は両腕をつき、空いている方の左足で今度は彼女の胴体を狙う。
「……だれ」
 リュメールの視線が背後に向く。揺れる彼女の、表面が揺れた。風の回転率が弱まる。ああ、この瞬間を待っていた。
 一つ、足に力を込め魔力を解放し、浮遊する。リュメールが銀髪女の左足を避け、浮いたままの右足をつかんだ。一気に距離を詰め両腕を振り上げてクナイで切りつける。銀髪女の右足で僕の攻撃を防いだ。
「ずるい」
「ずるくない」
 その言葉を交わしたのもほんの一瞬のことのように思える。防がれるところまではわかっていた。振り上げた時、それにはもう浮遊魔法を仕込んでいる。クナイから手を離した。懐から飛び出たナイフを掴み、腰の低いところで一気に横に薙ぐ。しっかりと切れる音がして彼女の腹の制服と薄い皮膚を傷つけた。布がはらりと落ちて覗いたへその上、赤い線が横に一つ走る。驚きに見開かれた瞳の赤が、よく似ている。その隙に銀髪女がリュメールの腕を振り払って体勢を整えた。
「アンタ」
 呆然とするリュメールからすぐに離れ、距離をとったと同時に、銀髪女に声をかけると彼女は無言でこちらへ振り向いた。
「助けてくれてありがとう。あとは僕に任せて他のとこ行きな」
「……ですが」
「僕は大丈夫。コイツは僕の敵。あとは僕一人でやる」
 表情のよくわからない彼女はそれでも、どこか不満そうに口をつぐんだ。もう一度僕とリュメールを見比べて踵を返した。他の生徒たちの中に紛れた銀色が、目の端から消えていく。
「じゃ、続き、やろっか?」
 伏し目がちの彼女の瞳が、今度こそはっきりと燃える赤へ変わる。


修練棟 16時の部
リュメールさん(@Na_zak1)、ラグナちゃん(@homu_o)お借りしました。怪我させてごめんね……!
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