「動きを止めるだけならバカじゃないかな」
は? と声を出す前に。僕の上空が翳る。視線が上がる前に、それは降ってきた。獣の耳をした夕焼け色の男が傘を持ったまま飛んでいる。体から発せられていた炎はその雨によって消し飛んだ。溶けかけた金属が制服に張り付いて固まっていく。
「クソ……ッ」
後退しようにも体は鉄線で動かない。ちいが僕の加勢をするか迷ったのか、ネコの捕縛を緩めていた。動きを戻したネコがヒルデへ反撃する。
「形勢逆転ってね」
シュルシュルと伸びてきたさらなる鉄線を避けようと暴れても、動きが制御されている中ではどうにもならない。雨は強くなるばかりだった。やはり、水がいるのは面倒臭い。両足両手を封じられた今、できることは……。
「茉紘!」
ヒルデの声と同時に両手首の捕縛が解放される。ヒルデの双剣がぶった切ったらしい。ちぎられた鉄線は、すぐに血液へと変化してその主人の元へと戻った。[D:38960]をヒルデのツインテールが撫でる。足はそのまま、思い切り仰け反ってヒルデを追いかけていたネコにクナイを無属性魔法に乗せて飛ばした。金属音が全部で二つする。一つはネコがクナイを弾く音。もう一つはヒルデが足元の鉄線をぶった切った音。解放された足でフィールドを踏みしめてネコとの距離を詰めた。懐から取り出したナイフを振りかぶる。
「チッ、早いんだね」
「オレは偉大なケットシーになるからにゃ。このくらいは……」
上空から驚きの声が響く。ちいの針金が水属性の獣耳を捉えたらしい。雨がやむ。一度離れた僕と、ヒルデの背中がぶつかった。
「くたばってないでしょ、ヒルデ」
「もちろん。先ほどは動きを封じられていたが、元気そうだな? 茉紘」
「ヒルデが助けてくれるって信じてたからね」
お互いの手の甲が触れ合った。対峙したアッカの三人組はなお、ほぼ無傷でそこにいる。[D:38960]がほんの少しニヤついた。
「まだまだこれからでしょ、行くよ」
駆け出した足は驚くほど軽い。飛びかかった相手の瞳すらも、楽しそうに見えた。
修練棟 16時の部
ちいくん(@utatane__zZ)、ヒルデちゃん(@Kina_mochi)、エルロくん(@tukinoze)、鴇羽くん、雨麗さん(@shiroyagisan__)
お付き合いありがとうございました!