遭遇
ハイリヒンメル 。かのホル=ティンドの遺跡で見た石板をどうしても思い出さずにはいられない。ここが攻撃されている。そして襲っているのは魔物の死体。何かが裏で動いている。その何かとは? ……いけない。余計な考え事はきっと命を落とす。
ゲートをくぐってから数時間。ゾンビドラゴンやドクフラシと複数戦闘したものの、それなりに救助は順調のように思えた。否、生徒の中にも怪我人は出ているようで救助テントはてんやわんやらしいが。
あたりの家々は崩壊している。瓦礫が積み上がり、所々に血痕が見えた。むしろ見晴らしがいいそこは、空気を読まない澄んだ青い空の下で被害の色を強くしている。はたしてレイは大丈夫だろうか。顔色が悪かった。いつもの何倍も無愛想で、彼に余裕は一切なかった。故郷が壊されて行くという感覚は一体、どんなものだったのだろう。私にはわからない。
ここにきて、怪我を負った全ての人を見て、私にできることはなんだろうと考えた。戦闘支援型アンドロイド。なんて微妙な立ち位置だろう。私は完全に戦闘に特化しているわけではないし、かといって回復が得意な支援側でもない。アタッカーの攻撃力を増幅させ、防御をあげるだけ。他人がいなければ私の活躍の場はない。……非力だ。
「……私は」
ポツリと呟いた、その言葉の隙間から音が聞こえた。私の声じゃない。私の息じゃない。これは……。
漂う腐臭。ああ、一人の時には遭遇したくなかった。マスクの透過度を下げる。背中の斧に手を伸ばす。音が近づいた。周囲の瓦礫が音を立て始める。忌まわしい。そうだ、彼女は……自分を鞭打って戦っていたあの子は、大丈夫だろうか。
−−GUOOOOOOOOOOOOOOOOO
凄まじい咆哮と腐臭に紛れた爆風が辺りを包み込んだ。澄んだ空は醜いゾンビドラゴンの体で埋め尽くされる。さて、ここからどうやって私は抜け出そう。