メメロのミートパイが
食べたい!

クオリア
メメロ捕獲01


「なんこれ」
 配られた資料を眺めながら思わず声が漏れた。高くゆんだポニーテールの毛先をそっと撫でる。
 教師らしき野郎があらかた説明を終えると、周りがざわつきつつも部屋から一人、また一人と人が出ていった。
 メメロ、と呼ばれる魔物? は見た目こそ禍々しく見えるものの実害はないようだ。ただし分裂、増殖を繰り返し無限に増えて行くため、完全討伐が厳しいんだとか。だからか。こんな弱そうな魔物をわざわざ全校生徒を集めてまで捕まえようとさせるのは。
 くだらないが、これ一匹程度で授業が免除されるなら安いものだろう。さっさと捕獲して寮に戻って寝よう。あ、でも資料によると元は食用らしいから、これを直接調理室に持っていってうまい飯を作らせるという手もあるな……。
 そんなことを考えながら部屋を出ようとしたとき。
ーーーキュウキュウ
「……!?」
 足元から鳴き声がした。とっさに担いでいた鉄パイプを左手に持ち替え、振り下ろしかけて寸前で止める。周りが殺気に驚いて俺の周りに空間ができた。
「あ、メメロ」
 周囲の誰がいったか定かではないが、多分その場にいた全員の視線がその小さな生き物に注がれただろう。コンマ1秒、長い一瞬を置いて空気が動いた。振り下ろしかけていた鉄パイプはそのままその生き物を潰したように見えたのだが。
「……クッソ、分裂しやがって!」
 追いかけようとしたが他の生徒に行く手を阻まれた。ここでは獲物の数に対して捕獲者が多すぎる。俺もさっさと人のいないところに行くのが得策だろう。
 にしても、叩き潰して分裂されてはいつまでも殺せないし捕獲できない。どこかへいって捕獲用の瓶か何かでも取ってこようか? 商業棟に赴いてもいいかもしれない。小さな生き物とはいえ、自分の手を一度でも逃れた獲物は最後まで追い続けるのがモットーだ。これは楽しくなってきたな。ニヤリと頬骨が上がる。



「メメロのレシピ集もありますけど、いります?」
 ふわふわとした雰囲気をまとった店員が、メメロ捕獲用の瓶を会計台に置きながら言った。
「そんなメジャーな食いもんだったのか」
「結構美味しいお肉ですからね〜。お安くしておきますよ?」
 パラパラとレシピ集をめくる。食用に使われるメメロは主に肉料理が多いらしく、なんともジューシーなハンバーグやステーキが並んでいた。
「肉料理か……」
「あんまりお好きではない感じですか?」
「肉が嫌いな種族はいねえだろ。でも別にグルメってわけじゃねえからなぁ」
「スイーツとかもありますよ。特にメメロのミートパイは美味しいらしいですけど……」
 店員の言葉が終わるよりも早くページをめくった。メメロのミートパイのページは瞬時に現れ、その味すらも感じさせるような写真が目に飛び込んだ。
「買われます?」
「……腹減ったら買いに来る」
「じゃあ待ってますね〜」
 手のひらよりもはるかに大きい瓶を取り、代金を乱暴において雑貨屋を出た。さて、ここから何匹捕まえようか。

1/3
prev  return  next