メメロのミートパイが
食べたい!

クオリア
メメロ捕獲02


 島中に散らばったのはメメロだけではなかった。メメロを追いかける、いわばライバルたちがうじゃうじゃと時には群れをなして数少ない獲物を狙っていた。
 メメロは脆い。ある程度の力があれば手で握り潰せてしまうほどに、脆い。しかし学校側が全校生徒を集め、わざわざ授業免除の権利を与えてまで捕まえさせようとするのには大きな理由がある。それは、彼らの分裂性。捕まえたと思ったらすぐ二つに分裂し、個体は増殖して行く。成長スピードも素早く、キリがないのだ。実際、探し回っているうちに何匹か見つけたがすぐに増殖して逃げられてしまった。あちらこちらでも逃げられたことに対する悲鳴や愚痴、罵詈雑言が飛び交っていてなかなかの治安である。
「メ〜メ〜ロ〜出〜て〜こ〜い〜」
 恨み言のように口から漏れ出すその言葉は逆効果のようにも思えるが、つぶやきでもしないとこのむしゃくしゃした思いはどうにもできない。大量発生しているはずのメメロはそこら中の生徒によって捕まえられたり分裂させたり逃げられていたり、と俺の目の前にはやってこない。イライラが募る。
 気づけば随分と島の中心部から離れていた。ここはゲート付近の水場だ。ここいらまで来るともうすでに他の生徒の姿はまばらだった。担ぎながら移動していた鉄パイプを支える右腕も疲れ、ずりずりと引きずりながら歩く。
「ん?」
 ほんの少し、鉄パイプの重さに変化があった気がした。無意識に魔法を発動していたわけでもあるまいし、と思って視線を移動する。そこには、ほぼ同化した色のまま充血した一ツ目をぎょろりと動かす得体の知れない生き物がくっついていた。
「あーーーーーー!」
 思わず大声を出すとメメロはビクッと体を縮こまらせ、すぐ横に伸び始めた。これは分裂する前触れだ。まずい。とっさに左腕で抱えていた瓶をメメロにかぶせる。
 どこか焦っているようなメメロが瓶の中で分裂を始めた。みたところ総体積はそれほど変わっていないようだが、メメロの一ツ目が増殖していく様はちょっと不気味だ。
「つーかこれ、どうやって持って行こう」
 ひとまず、鉄パイプと瓶をそのまま持ち上げた。心の中でせーの、と掛け声をかけて鉄パイプと瓶をひっくり返す。改めて中を見ると、先ほどのメメロは4つか5つほど分裂していた。かわいらしさも否めないが、やっぱり蠢く姿はちょっと気持ち悪い。というかこれは一体何匹の判定になるんだろう……。体積的には一匹プラスαくらいだが、見た目は4、5匹だ。
 まぁいいか。さっさと商業棟に持っていって授業を終わらせよう。今日はもう部屋に戻って寝たい。
ーーーキュウウウウウウ
「は?」
 ガサガサと周辺の草むらがざわついたと同時に、特徴的な鳴き声が響いた。この鳴き声の数は一匹じゃない。現れたのは凄まじい数のメメロだった。ざっと100体以上はいるだろう。一心に俺を見つめるその一ツ目の集合体が怖い。いつのまにこんなにたくさんのメメロが俺の周りに集まっていたのだろう。周囲を見渡しても、俺以外生徒の姿はない。
「……楽しくなってきたじゃねえか」
 ひっくり返した瓶を脇に置いた。解放された右手の鉄パイプを握りしめる。鉄パイプと小さな瓶でここにいるメメロ全部を引っ捕らえるのは難しいかも知れない。わかっている。ただ、目の前にいる魔物を殺さないと気が済まないだけだ。
「つーかお前らって離れはするけどくっつきはしねーのか?」
 キュウウウウと鳴き声の大合唱が響いた。伝わるわけねーか、と鼻で笑った。捕獲しなくったっていいなら話は早い。
 鉄パイプを振りかぶり、群れの中に思い切り振り下ろした。

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