ふぅ、と息を吐いた。
こんもりと積み上げられたメメロの山が目の前にそびえている。メメロ自信というよりも、メメロをすり抜けて地面にぶつかりまくったせいで形が変わりつつある鉄パイプを放り投げた。そこら中にいたメメロをかき集め、気絶させてここに積み上げているのはいいがこれの運び方を俺は知らない。つーか一つになれよ、分離できるくせに、と心の中で悪態をついた。
冷静に今の自分のできることを分析する。俺の魔力は弱い。強いてできることといえば、浮遊魔法と金属硬化程度だ。大量のメメロでもさして重くないものの、これをまとめて運ぶ魔力はない。何か入れ物に入れてしまえば簡単なのだが……。
周りを見渡した。金属の板か何かさえあれば、と思った矢先。見回した視線の先にそれはあった。随分と錆びれ、歪んではいるが1メートル四方程度の金属板。これだ。金属板の上に足を乗せ、板の端を持ち思いっきり引っ張った。それは簡単に曲がり、何度か繰り返していくうちに不恰好な金属の箱ができた。その中にメメロを放り投げていく。ほとんどが気絶しているが、目を覚ましそうなものはもう一度気絶させた。
この程度なら特に重くないから素手で運べるだろう。しかし、とっさにあいつの言葉が頭の中で再生される。
『この先、力だけでは生きていけない。魔法を覚えなさい』
忌々しい。たかだかメメロを運ぶだけでどうしてこうもあの野郎の顔を思い出さなきゃいけないのか。……今周りには誰もいない。苦手な魔法の練習くらいにはなるかも知れない。あの野郎は嫌いだが、自分でも魔力は高めなければならないとずっと思っていた。
もう一度息を吐く。集中する。魔法を使うのはいつだって難しかった。
「……ハァッ」
力を込めた右手の上に、ゆらゆらと不安定ながらもメメロを乗せた金属箱は移動する。メメロをかき集めていた時には一滴もかかなかった汗がひたいに滲んだ。金属箱を心持ち前におき、体を押し出すように移動を始めた。さて、これはどこまで持つだろう。
*
「……っあーーーーもう疲れた! ほら、メメロ!」
「毎度です〜。ちゃんとみんな生きてるんですね」
浮遊魔法を解いて商業棟の臨時メメロ受付のテーブルの上にどん、と汚い金属箱ごと置いた。受け付けていた職員はあっさりと金属箱を溶かし、無に帰すと中のメメロを背後の大きな樽らしきものの中に投げ込んだ。
「じゃあこれ、授業免除の書類です」
「……ん、なあおい」
「はい?」
「メメロってもらえねーのか?」
「ええ大丈夫ですが……えっと、クオリアさんはあんまりオススメしません」
捕まえたメメロの数が魔法により自動で書かれている名簿を眺めながら職員は言った。
「ちょうど評価の境目なので、一匹取り除くと評価下がっちゃいますよ」
まじかよ、という言葉は自然と口から漏れた。せっかく楽しみにしていたメメロのミートパイはお預けというわけだ。否、今からまたメメロを取ってくればいいのだが不慣れな魔法を使ったせいで疲労が蓄積しすぎているから厳しい。
「どうします?」
授業免除、評価が上がるなら仕方がない。というか、先に説明しろっつーの。職員の背後では目を覚ましたメメロたちがうようよと蠢き始めていた。
「……なぁ、どっかでメメロのミートパイ食えたりしないか?」
凝った肩を回す。職員が口にした店の方へ、俺の足は向かい始めた。
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