事の発端はわたしが膝枕をしながら葛葉の耳をいじくって遊んでいた時だ。
「葛葉っていっぱいピアス開いてるよね」
「まぁそれなりには開いてる」
「痛かった?」
「全然?」
「……わたしも開けたいなぁ」
「はぁ?」
そんな会話をしたのが数日前。
今、目の前にはピアッサーが置いてある。
「葛葉開けてよ」
「なんでだよ」
「自分で開けるの怖いもん」
「なら開けンなよ…」
「もしかして葛葉開けるの怖い?」
「はぁ?怖くねぇし吸血鬼だぞ?それぐらい平気だわ!」
「じゃあ開けてよ!」
ここは葛葉に開けて欲しい。
自分で開けるのが怖いのは本当だが、どうせなら彼にやって貰う方がいい。
「お願い!」
「…報酬は?」
「えぇ…」
「対価を払え対価を」
「プリンいっぱい買ってくる」
「…手作りプリン」
「ッ…わかった明後日休みだから…いっぱい作る」
「15個な」
「クッ……わかった」
ピアスをひとつ開けるための対価が休日をほぼ犠牲にプリン作り。
それでも開けてくれるならまぁいいか。そう思って腹を括る。
「あぁ〜仕方ねぇなぁ、つーかなんでそんなに開けたいンだよ」
「…葛葉とお揃いにしたい」
「…は?」
「だって…葛葉吸血鬼だし、少しくらい共通点が欲しくて」
「スゥーーーーー……ッんとマジで…」
「なにさ」
「開けてやっから耳だして」
「ん」
いざ開けてもらうとなると緊張してしまって
葛葉の服を掴んでしまう。
「…怖いならやめっけど」
「いい、やって」
「……」
『ガシャン』
耳元で大きな音が響き、痛みが遅れてやってくる。予防注射と同じ、それ以下の痛みが耳に訪れる。
「いっ…たい」
「そりゃちょっとは痛いだろ」
「痛くないっていったじゃん…」
「俺は吸血鬼だからな」
「理不尽……」
耳が熱く発熱してきた。
開ける側の葛葉も割と緊張していたのか握った手に動揺を感じた。
それでもこれで少し葛葉に近づいた。
生まれた世界も寿命もなにもかも違う彼と少しだけなにか共通点が生まれたことに幸福感を覚えた。
「ちょっと血出てんな」
「え?」
突然耳に湿ったザラザラとした感触。
ビックリして離れようとしても葛葉に体を掴まれていて離れられない。
「ちょっ、と」
「ンっ…勿体ないだろ」
「それぐらいケチらないでよ…しかも消毒しなきゃいけないのに…」
「1滴足りとも逃さねぇからな」
「…あほ」
なにはともあれ私の左耳には黒い石のついたファーストピアスが刺さっている。
嬉しさで少し痛いのにピアスを少し指でつついていると。葛葉がおもむろに自分の左耳のピアスを外し消毒液でピアスを洗った。
「ほら…これやるよ」
「えっ…」
「…お揃いがよかったんだろ」
少し恥ずかしそうにピアスを差し出してきて、葛葉の耳を見てみればもうひとつ同じデザインのピアスがはまっていた。
「…うん、安定したらこれに変えるね」
「おう」
葛葉のピアスをはめることができるようになるにはまだ時間がかかるがそれでもお揃いにすることを拒むことなく、自分のピアスを私にくれることがうれしかった。
プリンの数少し増やしてもいいかな。