▼ 07-03
昼食が終わると、午後はボーリングを楽しんだ。
今度は個人戦で、1位が翼、2位が立花くん、3位が私、4位が紅羽になった。でも、みんな200点以上も叩き出したから、紅羽も満足していた。
「翼も立花くんもすごいね」
「千迅でいい。翼も紅羽に名前呼びを許しているからな」
紅羽にも……てことは、人間嫌い克服計画は成功しつつあるんだ。
ほっと安心した。……けど、なぜか小さなモヤモヤが生じた。
なんだろう、これ……。なんか、気持ち悪いな……。
「……じゃあ、私も怜でいいよ」
胸の奥の靄が広がらない内に言って、話題を変える。
「ところで千迅。紅羽をどう思ってるの?」
「……何だ、藪から棒に」
少し間を置いてぶっきらぼうに返したけど、どこか動揺しているように見えた。
「妙に紅羽を意識している気がしてね。肝試しの時も、テニスの時も」
小さく笑って言えば、千迅は黙り込んで目を逸らした。
翼と同じでわかりやすい子だなぁ。
「あの子、恋愛経験ないから鈍いよ」
「……何のことやらわからんな」
はぐらかそうとする千迅に、クスッと笑ってしまった。
「応援はするけど……紅羽を悲しませるようなら、容赦しないから」
紅羽を泣かせる奴なら絶対別れさせる。
その意味を込めて、笑っているけど目は笑っていない酷薄な表情を見せた。
対する千迅は対抗するように小さな笑みを浮かべる。
「肝に銘)じておこう」
そう言って、紅羽の所へ行った。
やっぱり好きなのか……。あー、紅羽が巣立っちゃう……。
「怜」
「あ、翼。……どうしたの?」
後ろから声をかけてきた翼を見れば、彼は少し不機嫌そうな顔をしていた。
「千迅と何を話していた」
「紅羽のことで、ちょっとね」
意味深い言葉を含んで言うが、翼はわからないのか首を傾げる。
「たぶんだけど……あの二人、付き合うよ」
「……付き合う?」
「うん。経験がないから、たぶん時間がかかると思う」
恋愛をしたことがない紅羽にとって戸惑うことも多いだろう。
でも、私はそれに口を出さない。相談には乗るけど、紅羽の気持ちに横槍は入れない。
これは紅羽が幸せになるための、紅羽自身の試練だと思うから。
「あーあ、紅羽が巣立っちゃうなぁ……」
「……怜も、経験がないのか?」
「ないよ。恋愛なんてする暇ないし。今の生活が一番だから」
今の暮らしで十分、私は幸せだ。
「前までは紅羽だけだったけど、今は翼達がいる。今が一番楽しいから、恋愛はいいや」
恋愛より友情が優先。それが今の私だから。
言い切ると、翼は穏やかに私の頭を撫でた。
だから、気づかなかった。翼の感情の変化に。
この時の私達を見ていた子が、後に波乱を呼ぶことにも。
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