07-03

 昼食が終わると、午後はボーリングを楽しんだ。
 今度は個人戦で、1位が翼、2位が立花くん、3位が私、4位が紅羽になった。でも、みんな200点以上も叩き出したから、紅羽も満足していた。

「翼も立花くんもすごいね」
「千迅でいい。翼も紅羽に名前呼びを許しているからな」

 紅羽にも……てことは、人間嫌い克服計画は成功しつつあるんだ。

 ほっと安心した。……けど、なぜか小さなモヤモヤが生じた。
 なんだろう、これ……。なんか、気持ち悪いな……。

「……じゃあ、私も怜でいいよ」

 胸の奥のもやが広がらない内に言って、話題を変える。

「ところで千迅。紅羽をどう思ってるの?」
「……何だ、やぶから棒に」

 少し間を置いてぶっきらぼうに返したけど、どこか動揺どうようしているように見えた。

みょうに紅羽を意識している気がしてね。肝試しの時も、テニスの時も」

 小さく笑って言えば、千迅は黙り込んで目を逸らした。
 翼と同じでわかりやすい子だなぁ。

「あの子、恋愛経験ないから鈍いよ」
「……何のことやらわからんな」

 はぐらかそうとする千迅に、クスッと笑ってしまった。

「応援はするけど……紅羽を悲しませるようなら、容赦ようしゃしないから」

 紅羽を泣かせる奴なら絶対別れさせる。
 その意味を込めて、笑っているけど目は笑っていない酷薄こくはくな表情を見せた。

 対する千迅は対抗するように小さな笑みを浮かべる。

「肝にめい)じておこう」

 そう言って、紅羽の所へ行った。
 やっぱり好きなのか……。あー、紅羽が巣立っちゃう……。

「怜」
「あ、翼。……どうしたの?」

 後ろから声をかけてきた翼を見れば、彼は少し不機嫌そうな顔をしていた。

「千迅と何を話していた」
「紅羽のことで、ちょっとね」

 意味深い言葉を含んで言うが、翼はわからないのか首を傾げる。

「たぶんだけど……あの二人、付き合うよ」
「……付き合う?」
「うん。経験がないから、たぶん時間がかかると思う」

 恋愛をしたことがない紅羽にとって戸惑うことも多いだろう。
 でも、私はそれに口を出さない。相談には乗るけど、紅羽の気持ちに横槍は入れない。
 これは紅羽が幸せになるための、紅羽自身の試練だと思うから。

「あーあ、紅羽が巣立っちゃうなぁ……」
「……怜も、経験がないのか?」
「ないよ。恋愛なんてする暇ないし。今の生活が一番だから」

 今の暮らしで十分、私は幸せだ。

「前までは紅羽だけだったけど、今は翼達がいる。今が一番楽しいから、恋愛はいいや」

 恋愛より友情が優先。それが今の私だから。
 言い切ると、翼は穏やかに私の頭を撫でた。



 だから、気づかなかった。翼の感情の変化に。
 この時の私達を見ていた子が、後に波乱を呼ぶことにも。


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