争奪戦の行く末


「次はツナだぞ」
「ええー!? オレは無理だよ、なんにも強くなってねーし!」

 獄寺と山本はリボーンによる強化プログラム――という名のリボーンの暇潰し――を受け、獄寺はともかく刀に変化するバットを得た山本は多少なりとも動体視力と素早さが上がった。
 対するツナは何の強化プログラムを受けていない。そもそも喧嘩を嫌うツナは物騒なマフィアの世界が大嫌いであるため受けようとも思っていない。

 それでもリボーンはツナに自信を持たせる一言を発する。

「んなことねーぞ。昔のおまえが体を張ってライオンから京子を守れたか?」

 イベントストーリーの一つである動物園に行った時のことだ。
 リボーンは「えっ」と頬を染めたツナに銃口を向け――

「さっさと暴れてこい」
「ちょっ、まてよ!!」

 ――ズガン


 待ったの声も無視して撃った。

復活リ・ボーン!!! 死ぬ気でヒバリを倒す!! レオンーーー!!」

 脱皮して荒々しい死ぬ気の炎を額に灯したツナは、リボーンのペットであり相棒である形状記憶カメレオンのレオンを呼ぶ。変形した姿は――掃除に使われる、はたき。
 思わぬ武器に山本は唖然とし、獄寺は「しぶい!」と意味不明な感想を呟いた。

「君は変わってるね。強かったり弱かったり。よくわからないから殺してしまおう」
「だぁ!!」

 繰り出されるトンファーの攻撃をバチバチと受け止めつつ、ぽふぽふと雲雀の頭に当てる死ぬ気のツナ。傍目から見れば結構シュールだ。

 互角に渡り合っているツナに、獄寺と山本は見入る。
 だが、湊は表情を険しくしたまま。

「おい、和崎」

 不意に獄寺に呼びかけられて顔を向ければ、獄寺は怪訝な顔をしていた。

「そんなにオレ達に花見場所を渡したくねーのか」
「……は?」

 突拍子もないことを訊かれて、さらに眉間にしわを寄せる。

「何でそんな顔で10代目を睨んでやがんだ」

 ここで湊は目を瞬かせる。
 獄寺が周囲に目敏いと初めて知り、湊は意外そうに獄寺をまじまじと見た。
 最近あまり見ていない表情に、不意を突かれた獄寺は顔が熱くなっていく感覚を覚えた。

「な、何だよ……」
「……いや。周りに関心があったんだなぁ……と」
「どーいう意味だ!!」
「まーまー獄寺落ち着けって」

 ダイナマイトを出す獄寺に山本は止めようと肩を抑える。
 目敏いことは感心するが、短気という欠点はなかなか解消されないようだ。

「で、何でツナを睨んでるんだ?」

 改めて山本が問いかける。
 湊は顔をしかめ、戦っている二人に視線を戻す。

「睨んでいるんじゃない。ただ、判り切った勝負が不快なだけだ」
「ヒバリが勝つのか?」
「いや」

 即座に否定した湊に獄寺と山本は驚く。
 それならツナが勝つのかと思ったが――

「えー!? うそっ!? オレがやったの〜!?」

 死ぬ気の効果が切れて通常のツナに戻ったが、雲雀は倒せていない。しかし、雲雀は力が抜けたように両膝を地面につけていた。
 まさか自分が倒したのかと混乱していると、リボーンが「奴の仕業だぞ」と指差す。

 その先にいるのは、顔を摩りながら起き上がったシャマルだった。

「おー、いて。ハンサムフェイスにキズがついたらどーしてくれんだい」
「Dr.シャマル!」
「シャマルは殴られた瞬間にトライデント・モスキートをヒバリに発動したんだ」
「あの酔っ払いがそんな器用なことを?」

 信じられないという気持ちを表情に出すツナ。シャマルの日頃の行いから想像もつかなかったようだ。

「わりーけど超えてきた死線の数がちがうのよ。ちなみにこいつにかけた病気は桜に囲まれると立っていられない『桜クラ病』つってな」

(またヘンテコな病気だーー)


 シャマルの実力と変な病名に口をあんぐりと開けるツナ。
 一方で獄寺と山本は衝撃を受け、盛大な溜息を吐いた湊を見る。

「和崎……お前知ってたのか?」
「偶然な。だからそこの赤ん坊にも言ったのに……」

 獄寺に適当に返して悪態をついた湊はフラフラと立ち上がる雲雀の所へ行く。

「今回の不正試合は本来なら無効だけど、恭弥がこんなんじゃ楽しめないから、オレ達は帰るよ」

 じゃあね、と言って雲雀に手を貸さず付き添いながら去っていく。
 ツナ達の気配が遠くなって肩の力を抜いた時、雲雀が口を開いた。

「ごめん」
「……え?」

 突然謝られて、きょとんとする湊。
 雲雀は前に顔を向けたまま、ぽつりと呟くように言った。

「せっかくの花見が台無しになった」

 去り際に「せいぜい桜を楽しむがいいさ」と言ったが、悔しくない訳がなかった。
 負けず嫌いで闘争心が人一倍ある雲雀だからこそ、湊と同じく第三者による介入も不愉快だった。
 しかも今回の花見は湊を誘ったのだ。彼をがっかりさせることに負い目を感じていた。

 湊は意外と他人を思い遣っている雲雀に軽く目を瞬かせ、ふっと笑みを浮かべた。

「オレは気にしてない。誘ってくれてありがとう」

 嬉しかったよ、と微笑して続ければ、そう、と呟いた雲雀はそっぽを向く。
 胸の奥が熱くなったのは気のせいだ。雲雀は頬の熱を無視して、歩くペースを合わせてくれる湊と一緒に並盛中央公園から出た。


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