ユウリはヒバニー、ホップはサルノリ。そしてメッソンはダンデが引き取っていった。
さあ、ななしも2人にプレゼントをば!意気込んで向かおうとするも、ダンデらの母の「ご飯だよ!」と言う声に思わずずっこける。タイミングが悪い……。今日、出発する訳では無いし、明日家を出るタイミングで渡せばいいと笑いながら話すダンデをにらみつける。にらんだって、ダンデはひるんだりすることはないけれど。
大きく口を開けて肉を頬張るホップ。サルノリとウールーはそんなホップが喉をつまらせないかと心配そうにしていて。
ユウリはヒバニーと話しながら食事を取っている。それぞれ新しい相棒たちとは友好な関係を築いていけそうだった。
「まるで親のような目線だが、二人を見ているのか?」
「親みたいだった?確かに弟か妹みたには思ってるけど、さすがに子供ではないなあ。なんか、懐かしいなって思ってた。ダンデたちも出発する前にこんな感じでバーベキューしたでしょう」
メッソンには用意されたおにぎりのサイズが大きかったようで、小さくダンデがちぎってあげていた。今はこんなに小さい体なのに、進化するとスレンダーではあるもののだいぶ大きくなるのは少し不思議に思わなくもない。
「ああ……。ななしとホップが、行かないで〜!ってギャン泣きしたときか!」
「いらない事覚えてるね、ダンデは……!」
「あの時は大変だったなあ……」
笑いながらダンデは告げた。
思わず恥ずかしい過去を思い出す。
ダンデとソニアが旅立つ前日も同じようにバーベキューをした。ななしもそれに招かれた。しばらく2人には会えないから、と。
最初に泣き出したのはまだ幼いホップだった。
左手に串を、右手はずっとダンデのズボンを握りしめていた。舌足らずに行かないでと、頬を赤くさせて大きい瞳は涙で潤んでいたのがだんだん大きな泣き声になっていった。それにつられてななしも泣いた。1番大好きで身近だった2人が一気にいなくなってしまう。いつか帰ってくるだろうけど、それでも孤独になるのが辛くて悲しかった。ホップのように、泣きわめくことはなかれども、涙が止まらなくてみんなを慌てさせてしまった。
「その時だったよね。ダンデがチャンピオンになるってホップと約束したの」
そしてダンデはチャンピオンとなった。10年も、その座を守り続けている。
横に立つダンデを見上げる。あの時から既に彼のほうが大きかった、それは今でも変わらない。
肩幅は、ぐっと広くなった。首だって太くがっしりして。細くて少年らしかった身体には筋肉がつき。声も低くなった。
「そうだったな。……どうしたんだ、ジロジロ見て。視線が擽ったいぜ」
「ふふ、ごめんね。あの時とはだいぶ変わったなあって」
「十年も経ったんだ、変わるさ」
「見た目もそうだけど、私たちの関係とか。
十年前の私に、ダンデと付き合ってるなんて言ったらひっくり返って驚くよ」
あの頃から、それより前からダンデが好きだった。叶わないものだろうと勝手に思い込んで告げることはしなかったのだ。否、告げようとしたことはあった。
「あの日、もうダンデとしばらく会えないからって思って、ラブレターを準備してたの。結局、渡せなかったけど」
ピンク色のラブレター。前夜にスボミーに見守られて書き記したもの。誰かに見られないように隠し持っていた。しかし、ダンデにオレはチャンピオンになる!ななしも応援してくれと笑いかけられたとき、瞬時にラブレターをスカートのポケットに捻りこませた。
何で告白しようって思ったんだろう。こんなもの、渡されたって困るだけじゃん。ダンデの邪魔になっては駄目。それにどうせ、断られるから。
渡さなくてもいいか。
家に帰って、くしゃくしゃになったラブレターをゴミ箱に投げ捨てた。
「なんてこともあったっけ。本当、今でもダンデと付き合ってるのが夢みたいだと思ってしまうもの」
何気なく呟いた後、ダンデはおにぎりとメッソンをリザードンに預けたと思えばいきなりななしを抱き締めた。ぎゅむ、と音がしそうな程力が籠ったハグに思わず息が止まる。
「どうしたの、急に」
「ななしとオレはちゃんと恋人だぞ。決して、夢でも何でも無い。事実だ」
肩に顔を埋められて、少し擽ったい。くぐもった声からして、どうやら夢みたいという台詞が嫌だったようだ。拗ねてしまったのか。
「分かってるよ、ちゃんと恋人だって。でも、なんて言えばいいのかな。恋人になれるって思っても見なかったから、幸せで夢みたいだなって思うんだよね」
そっと肩から顔をあげ、こちらを見るダンデを見下ろす。ぎゅっと肩に顔を押し付けていたからか、前髪に癖がついてしまっていた。
まるで幼い子供のようで笑ってしまった。それに気付いたダンデも笑いだしていた。
「嗚呼、あとラブレターも読んでみたかったな」
「ええっ捨てちゃったよ。恥ずかしかったし……」
「尚更読みたい!書いてくれ」
「ええ……?」