番外編 ナツヤと
「そういえば、オレ、見たよ」
「ん?何を?」
ウクレレピチュー&ピカチュウのセッションをニコニコして聞きつつ、スマホでシャッターを決めることも忘れない。こんな可愛い姿撮らずしてトレーナー名乗れねえよ……!!
なんてしていたらいきなりナツヤに話しかけられた。ナツヤも同じくカメラのシャッターをきめる手を止めずに。分かるよ、この可愛さ。撮らずに居られねえ!
「前におまえが送ってきたダンデのプレゼン」
「あ!!見たの?どうでしたかね!?」
思わずスマホを投げかけた。ヤバい、ただでさえダンデくんの情報で興奮する度に投げるか落とすかされてきたスマホに新たなヒビが増えるとこだった。……新しいやつ買った方がいいかな……。
従兄弟であるナツヤとはよく連絡をとる。元々仲が良いほうであったし、遠く離れた地方にいることもあり実際に会うのは難しいので。
そして私はナツヤにずっとダンデくんのことを話していた。SNS等を始めたばかりのころは、フォロワーもほぼ0で壁打ち垢みたいなものだった。それに文句はないのだが、レスというか私の語りに相槌が欲しい……!と思うようになり。ナツヤに語り出すようになった。ナナさんや他のダンデくん推しと出会い、フォロワーとも気兼ねなく話せるようになった今でも話す。話さなかったら逆にナツヤに「風邪か?」って心配される。
ただ、彼が正式にポケモンレンジャーとなってからは仕事で忙しくなり、(私も仕事を始め、互いの時間が会わなくもなり)連絡はとるが、以前ほど時間がかけれなくなったので、メモに私が推しポイントを纏めたプレゼンを送り付ける。そして次に連絡をとった時にそれについて話すのだ。
「視点が親だと思った。彼の成長に胸を熱くしてしまったってとこ見て」
「熱くもなるでしょ……。ずっと見てる……って言ったらキモイ感じするけど、それこそずっと推してるからさあ、チャンピオン初期はたどたどしい感じがしたのにさ〜!今はもう、あんなに立派!!!」
「ずっと推しポイント聞いてたから、ダンデがチャンピオンから下りたって知って胸にきたわ。おまえの影響だぞ、これ」
「少しでも意識してくれて嬉しい」
広がれダンデくんの輪……!!
「オレ、おまえのこと同僚に話したんだよ。すげぇ推しについて語る従兄弟がいるって」
「待ってミナミさん?くそ恥ずかしいんだけど!?」
ミナミさんは同じくポケモンレンジャー。ナツヤと同じ地方にて活動をしている。実際に話したことはなくて、端末を通してちょっとだけ。顔は写真で見せてもらったんだけどすごく可愛かった。彼女も休暇を貰って帰省してるんだとか。ここだけの話、ナツヤはミナミさんのことが好き。付き合えば?って言うんだけどフラれたら仕事できなくなる!!と。せやな、タッグ組んで仕事してるのに、空気悪くなったら嫌だもんな……。
「そんなに好きなんだ?それって恋愛感情あるの?みたいなこと言ってた。オレも、おまえが異性に関して騒ぐこと全然なかったからどうなんだろうって思ったんだ」
「恋愛感情ねえ……」
リア恋勢か否かってことでしょ?
正直言って無い……とも言いきれない。ほぼ異性に関してあまり興味もなく(当時は幼かったからかもしれない)そんな私がずっと追い続けてきたダンデくん。初めてテレビのスクリーンに映った彼を見た時から、忘れられなくて。一目惚れだった。きっと、初恋だった。
でも、ダンデくんは有望なジムチャレンジャー。方や全くバトルセンスが無く、推薦状も無い私には大きな壁があり。勝ち進むであろう彼に持ってしまったこの恋心はきっと叶うはずがない。
だからこそ、彼の瞳に私が映ることがなくとも、ダンデくんを応援したいと思って、今日まで彼を応援してきた。チャンピオンじゃなくたって、彼がいる限り私は彼を応援したい。そんな気持ち。
「こう……恋心もあるけど、叶わないだろうしなって知ってるので、全力で応援してる感じ……?」
「ああ、何となく分かるかも」
「お互い初恋は叶わなそうだねぇ」
「そうだな……ってなに!?オレも!?」
「ミナミさんと、どうなった?」
「……先輩レンジャーの娘さんがさ、事件が解決した後に、『ナツヤさんもミナミさんもデート気分で楽しんでって!』ってからかわれてさ、オレ照れちゃったんだけど、ミナミは……」
「ミナミさんは……?」
「顔を……赤くすることなく……ニコニコと……。照れるオレを見て、首を傾げていました……」
「辛すぎ……サイコソーダ飲みな……?」
ヤケ酒ならぬヤケサイコソーダである。
私たちを慰めるように優しい音を奏でだしたウクレレピチュー&ピカチュウのセッションを2人して拝んだ。オマエらサイコーだよ……!
「ナツヤ……私、ダンデくんの彼女になったわ……」
「なんて???」