001は友と語らう
「えええーーー!?」
部屋に声が響く。びっくりして、眺めていたリザードンの写真を落としたピカチュウが振り返る。
汚れたらどうしてくれようかと覚えていないはずのこわいかおを使ってきた。気持ちはわかる、ごめん。
「とりあえずこれ見て相棒!!」
スマホのトーク画面に貼られた写真にピカチュウが興奮したように鳴き声をあげた。
「ありがとうダンデくん様……ありがとう……新しい服最高………………リザードンとのツーショット………………ひえ……」
拝み倒した。とりあえず印刷して壁に貼ろうかピカチュウ、どこに貼りたい?
「ウクレレちゃん知らなかったの!?」
「そうだよナナさんが教えてくれなかったらいつ私はえっち、じゃなくて素晴らしいこのオーナー姿に会えたのか分からないよ」
「普通に口に出てるわ、でもわかる……えっちなのよね……!」
「ナナさん……!!」
「ウクレレちゃん……!!」
ピシガシグッグッ!
ついでに熱い抱擁もかます。わかるか同胞よ、わかるとも同胞よ!肌を見せるんじゃねえ、あのかっちりした服に潜む鍛えられたダンデくんの肉体美全てがえっちいんだよ!!
ちなみに、ウクレレちゃんは私の名前ではないし、勿論ナナさんも彼女の名前ではない。
ナナさんはダンデファンクラブ会員番号から取った渾名で、ウクレレちゃんは私のピカチュウからとった渾名である。今は互いの本名を知っているのだけど、如何せんこの渾名で呼びあった時間が長いので染み付いてしまっているのだ。
ファンクラブ会員番号1番と7番で盛り上がるぜ!
場所は私がダンデくんと出会った喫茶店である。馴染みの店長さんは私たちがはしゃいでいても慣れっこだし、マップにも載らないぐらい小さな街だもんでお客さんもあまりいないので、適した場所なのだ。(勿論お客さんがいたら自重する)
「でもチャンピオンマッチ終わった後、各地であったダイマックス事件とかさ、ダンデがオーナーになるのとは別の話だけど、世の中大騒ぎだったのに、ウクレレちゃんそれも知らないの?」
「ひえ……各地でダイマックスとかガラル壊れるやんけ……。知らなかった……。ずっと家のお掃除してたわ」
「お掃除?」
「お掃除というか……ダンデくんが負けたじゃん?いや、ダンデくんが負けたことにどうこう言う訳じゃなくてね、長年チャンピオンだった座を降りたっていうの、私にとってのいい区切りかなって」
「それはすぐわかるけど、区切りって何?」
「ダンデくんグッズ総整理」
「嗚呼……」
ダンデくん関連のグッズの量はマジで半端ない。
質もデザインも素晴らしいが、ヤバイ。新しいの買ったらすぐ違うところでコラボしてる。
ガラル地方は、ジムリーダーやチャンピオンの人気はもはやアイドルとかのレベルなので。
数量限定アイテムとかもあるわけ。1個ずつ、買い占めも一気に何個も買うのもダメという自分ルールのもとコツコツ買い集めてきたが、配給の多さよ……!
どんどん貯まっていくから、ある程度の頻度を置いて整理する。捨てるわけじゃないよ、部屋に飾るメンツ決めみたいなものだよ。捨てれる訳が無い。
「ダンデくんがチャンピオンになる前の応援グッズ、チャンピオンになってからバンバン売られるコラボ商品、モチーフグッズ、ダンデくん関連の雑誌……しまってるのも飾ってるのも全部引っ張り出したよね」
「途方もないでしょそれ……。ウクレレちゃんほどのグッズ集めてない私でも大変よ、総整理は……」
「私もそう思って、日を分けてやろうと思ってたの……でもね」
気がついたら、3徹だったの、と続けて言った言葉に対しナナさんに「マジ?」と聞かれた。マジなのーー!!
昔のグッズほど思い出が蘇るというか……。チャレンジャー時代に販売されたダンデくんモチーフシリコンブレスレットとかね?1個思い出したら連鎖して思い出しちゃうの……。あとダンデくんのインタビュー記事や特集読み直したりとか……。そのまま興奮してたらピカチュウと一緒に3徹していたのだ。(それでも終わらないグッズの多さ……)それに気付いた瞬間眠気が凄まじくなって、意地でもお風呂に入ったあと寝落ちしてしまった。その後にナナさんからのダンデくんオーナー姿写真が送られ死んだ。
そして今日ナナさんと遊ぶまでの間に全てのグッズを引っ張り出したせいでより汚くなった家を片付けていたのだ。やっぱり同じようなことしかけて、なかなか進まなかったんだけど、しょうがないことだと思う。
「グッズ整理しながら、ダンデくん……最初は少年だったのに、今ではこんなに立派になって……って思いと彼のチャンピオンになるまでとチャンピオンの終わりとこれからを見ることが出来る喜びに襲われていた」
「親かな……?あとウクレレちゃん、彼とほぼ歳変わらないでしょ」
「相変わらずだよねぇ。はい、二人とも、モーモーミルクのプリンだよ」
「待ってました!」
私たち二人とピカチュウの前に、店長が瓶の形の容器に入った真っ白のミルクプリンが置いてくれた。
甘い香りに思わず頬が緩む。口に運べば甘いミルクの味が広がってふわっと溶けていく。この美味しさ、素晴らしい……。店長が作るのはスイーツだろうとなんだろうと美味しい。絶対もっとお客さん来てもいいと思うのだけど、店長は「趣味みたいなもんだし、別に……」らしい。勿体ない気がするけど、きのみをふんだんに使用したパフェやら野菜の美味しさが滲み出たスープをじっくり堪能できるのは最高です!
「美味しかった……すぐ食べちゃった」
「そうでしょう、そうでしょう!店長さんの料理は最高なんです!」
「なんでウクレレちゃんが自慢げに言うのよ?……そう言えば、ピカチュウなんか元気なさそうだけど、どうしたの?」
「あ〜ね……」
皆さんご存知食いしん坊ことわたしの相棒ウクレレピカチュウ。
いつもなら店長さんが出してくれた料理をペロリと食べ、私の料理ですら食べちゃろ!と手を伸ばすのだが、今回は自分のプリンにすら手を伸ばさない。
「もしかしてウクレレ持ってないのと関係あったりする?」
「店長さん大正解!」
そう、いつも持っている赤色で小花をちらしたウクレレが無いのだ。うちの相棒の大事なシンボル。
「ちょうどナナさんから写真もらって三日後ぐらいかな、壊れちゃったんだよね、ウクレレ」