※他サイトにてあげているものです
豪華なシャンデリアを模した照明器具。
身を包む柔らかなベット。
きっとこんな状況じゃなければ、楽しめたのに。
そんなことを考えて、心の中でため息を吐くのはいつものこと。
彼女の女性らしく丸みを帯びた、けれど綺麗な線を何度もなぞる男の指。首筋や、胸元についたキスマーク。胸の膨らみに集まる男の視線を感じながら、彼女は笑ってキスを強請る。
獲物に食らいつく獣かのように、男は彼女の唇に貪りつく。ただただ唇と唇を合わせるような軽いものでなく、深いディープキス。恥じらった様子を見せながらも、負けじと舌を絡め、吸い上げ、口内をなぞってくる彼女に男は興奮が止まらない。
さて次は何をしようか……と考えたところで、男の意識は途切れた。
「はぁ……、やっとなの……」
2人でベットに入る前に飲ませたワインに入れた薬がやっと効いたようだ。男が深い眠りについたことを確認して、ベットに放置したまま、彼女はシャワールームに向かった。
メイクを落とし、ほぼ裸同然だったけれど、辛うじて着ていた服を脱ぎ落とす。どうせこんな派手なドレス、二度と着ることは無い。また違うドレスが用意されるだけなのだから、雑に扱っても何も言われることは無い。身体に残る赤い痕に舌打ちをする。夏だというのに、暑苦しい格好をしなければ、この痕はきっと隠せない。
「とりあえず、連絡しなくちゃ……」
スマホで、ホテルの部屋の番号と、長袖の服を持ってくるよう送信する。これだけ送れば十分。
まだ時間が残っているはずだから、シャワーを浴びようと思い立つ。
彼女は基本熱いシャワーを好む。肌がすこしピリピリするぐらいの。
何だか消毒されているような気持ちになれるから。身体に残る男の手が這う感覚も、キスしたときのヌルヌルとした、到底気持ちいいなんて思えない感覚も。
ベット同様ふかふかなタオルでしっかりと水気を拭き取る。夜風で冷えて、風邪をひくと大変だ。
シャワールームを出れば、いきなり服を投げつけられた。どうやらシャワーを浴びている間に、到着していたらしい。
「殺したから、着替えがいると思ったのに。殺さなかったんだ?」
見慣れた顔の男が話す。顔は見慣れたが、見る度に湧き上がる不快感には慣れそうもない。
「殺せ、なんて言われてない」
「でも前回の任務は殺してただろ?」
脳裏に真っ赤に染った、こことは違うホテルの一室が浮かぶ。私も、彼も真っ赤で。彼は死んでいた。死因は私の手に握られたナイフで────
「あれは、殺せって言われたから」
ぎゅっと服を握る手に力が入る。だからコイツは嫌なんだ。傷を抉るようなことばかり投げつけてくるから。
「ふふふ……」
「……何が面白いの?」
「いやぁ、あんだけ殺すのをしぶとく嫌がってた君が!初めて任務で人を殺した時に吐いてた君が!さも人を殺すことに慣れたみたいな顔して、嬉しくなったよ」
「今回は殺してない!」
「それはたまたまでしょ?殺せって任務じゃなかっただけ。昔なら、任務でも背いてたのに。君も組織に染まっちゃったァ?」
「……帰る」
「ハイハイ、服ちゃんと着て帰りなよー」
答えることをしないまま、服を着て、床に放り出されていたバックとスマホを引っ掴んで外に飛び出した。
ちらりと覗いたベットの上。先程までいびきをかいていた男の姿はとうになく。
ああ、連れていかれたのね。と思った。そうして欲しくて連絡を入れたのは自分なのに。
結局殺されてしまうなら、私が殺しておけばよかったのかな?なんて考えて、首を振る。臆病な自分がそんな手段をとれないことを彼女はよく知っているから。
熱をたっぷり含んだ外の空気が彼女を迎える。
星も月も見えやしない、暗い空が彼女を見下ろしていた。
ーーー久々に、お日様が見たいな。
最近夜に任務が多くて、昼夜逆転の生活だったし。
向日葵がいっぱい咲いてたとこに遊びに行ったのはいつだっけ?
確かもう、10年以上も前のことだ。
あの日、1日で体験した幸福と絶望を、彼女はずっと覚えている。
彼女がまだ6歳だったころ。両親の夏の休暇を利用して、お隣の仲良し家族とともに、向日葵で有名な公園へと遠出していた。
向日葵で埋め尽くされた光景なんて、テレビでしか見たことがなくて。彼女は幼なじみの手を掴んではしゃぎまくった。
「こら、あぶないぞ!」
「だって、だってたんじろう!こんなにいっぱいのひまわり、はじめて!大っきいね!」
たんじろう。竈門炭治郎。大好きな、大好きな幼なじみ。長男でしっかり者の彼の笑顔も、暖かい体温も、優しい声も、何もかもが大好きで。
今思えば、初恋ってやつだったのかもしれない。今知ったって、どうにもならないのにね。
ねぇ、と炭治郎が続けた言葉に、幼い私は破顔して彼に飛び付いた。……なんて言われたんだっけ?身体が浮かんじゃうんじゃないかってぐらいふわふわな幸福感に満ち足りたことは覚えているのだけど。
嗚呼、そのまま幸せに過ごせたら良かったのに。
具合を崩し入院している竈門家父のため、病院で寝泊まりをするという竈門家を見送って、家に帰って。いつもと変わらない明日が来るものだと、思っていたのに。
真夜中に起こされたかと思えば母が凄い形相で彼女を箪笥に押し込む。
慌てふためく彼女を真っ直ぐ見つめて母は言う。
「絶対、ママとパパが大丈夫って言うまで出たらダメよ。何があっても、出てはダメ。いい子だから、約束守れるわよね?」
幼心に、只事ではないのだと理解した彼女は、母と静かに指切りをした。
「……戻ってきてね、ママ」
返事をせずに、ただ微笑んだ母の姿に言い様のない不安が募ったのを、覚えている。
怒鳴り声が、悲鳴が家に響く。聞き慣れない鈍い音。何かが壊れる音。自分の家が、全く違う怖い場所のように思われて、彼女は箪笥の住みで蹲っていた。どれくらいそうしていたかは分からないが、いつの間にか音はしなくなり、辺りには静寂のみがあった。
ママ、パパ、なんでだいじょうぶって言ってくれないの?
ぐあい、わるくなって、たんじろうのパパみたいに、たおれちゃったのかな!?
静かになったし、出ても、いいよね……?
約束を破ることに少し罪悪感を覚えながら、箪笥から抜け出し、廊下を通って、恐らく2人がいるはずのリビングのドアに手をかけると。
「…………には、む……がい……」
「ふむ……か……した……か……しれ……」
誰かがいる!もしかして、彼ら2人と両親に何か関係があるのかもしれない。話し声がよく聞こえないよ、ドアを隙間から見えるぐらいまで開けば、聞こえるかもーーー……。
「ひっ……」
息が零れた。それは見知らぬ男2人の背中が見えたからではない。足元に伏せる男女の姿。それは紛れもなく彼女の両親であったはずのものだ。
カーペットを赤い液体が濡らす。
「全く面倒だったな……。結局鬼殺隊の情報漏らさなかったしよ……」
「まあ、簡単に漏らすようではそれなりの地位にはつけんだろう。さて、ここにはもうひとり娘がいたはずだが……」
より鮮明になった声が耳に届く。話の内容はよく分からないけれど。
確かなことがある。
コイツらが、母や父を傷つけた。そして、彼女自身を探しているのだ。ーーー逃げよう、誰かに助けてって、言いにいかなくちゃ。
しかしそこで不幸なことに、焦り故だろうか、足を滑らせた彼女は思わず悲鳴をあげてしまった。
当然声を聞き逃す訳がなく。2人が振り向き、目が合う。男が嗤った。
「やっぱり隠してやがったか。娘は今ここに居ないとか、わかりやすい嘘ついてよォ?お前もこのゴミみたいに殺してやるよ」
男が母の体を踏みつけた。それを見たとき、彼女から恐れの感情は消え去り、怒りでかっと身体が火照る。馬鹿にしたのだと。大好きな両親たちのことを。よくも!!
叫び声をあげながら、助走をつけ男に飛びかかる。これを受けるのが同い年の男子であれば、相手の男子は失神を免れなかったであろう。彼女は幼なじみの炭治郎に言わせれば「可愛いおてんば娘」であった。しかし、大きい肉体を持ち、武に秀でた男にとっては軽い攻撃であった。そのまま彼女の小さな身体を床へと叩き落とす。頭にがつんと衝撃が襲う。目の前が暗く染まりきる前に、母の虚ろな目と目が合う。もう、母に頭を撫でられることはない。父に肩車をして貰うことはない。……そして、もう、たんじろうとは会えないのではないか。幼い彼女は為す術なく、涙を一筋流して気を失った。
「弱っちいな、突っ込んできた気概は褒めてやってもいいかもしれんが。どうする?殺すか?」
「……いや、連れて行こう。身体能力も見目も悪くない。育てて、手駒にするのも悪くない筈だ」
「ひゃは!鬼殺隊の娘が、敵対組織の手駒か!面白ぇ、そうすっか!」
ピピ……、アラームをとめ、ベットから起きる。
どうやら夢を見ていたようだ。あの天国と時間をいっぺんに味わった日。彼女がこうなってしまった、運命の日。彼女は任務で、血を見る度思い出す度、決まってあの日の夢を見るのだ。
「いらっしゃいませ、ご注文は如何なさいますか?」
某コーヒーチェーン店にて、彼女はバイトをしていた。
あの日連れ去られてから、彼女には所謂普通の生活など一切が取り上げられた。両親が付けてくれた名前も奪われ、全く別人の戸籍を代わりに与えられた。友と遊ぶ時間の代わりに、人を殺す術を叩き込まれた。恋に胸を高鳴らせる時間の代わりに、身体でもって人を垂らし込める術を叩き込まれた。といっても、未だ処女であるのは不幸中の幸いになるのだろうか。
初めて人を殺した時なんか、吐き気が止まらなくて、目をつぶる度に血飛沫がフラッシュバックした。厳しい訓練、人を殺すこと、騙すこと。絶対やりたくないって叫んだこともあった。でもそうすれば待ち受けるは折檻。暴力の恐怖はあっという間に彼女を支配した。その支配は重い鎖のように、20を過ぎた今の彼女にもまとわりついている。
そして何時しか彼女は諦めてしまった。大声で任務などを拒否することを。代わりに組織に、アルバイトをする許可を得た。学校で過ごすことなども無かった彼女は望んだのだ。夜は犯罪に手を染める悪であっても、せめて昼は普通になりたい。どこにでも居る、人になりたい。普通の仕事がしてみたい。そんな思いで彼女はアルバイトを始めた。戸惑うこともあるし、忙しい時もあるけれど、アルバイトの時間は彼女にとって癒しの時であった。
夜中に任務が入ると、なかなかアルバイトには来れないのだが、良い人たちに恵まれたおかげでなんとかこなすことが出来ている。
お昼を少し過ぎ、賑わっていた店内も落ち着きを見せ、客もまばらになった。ふぅと息をつく。
またピークをみせるのにまだかかりますかね? そうかもしれませんね、と同じアルバイト仲間と会話をしながら開いたドアに目をやる。
「いらっしゃい…………ま、せ?」
様子がおかしい彼女に、アルバイト仲間は首を傾げる。彼女の視線を追えば、一人の男性が立っていた。赤が混ざった髪や瞳。でこにある痣。優しそうな整った顔立ち。花札のピアス。カジュアルな服装が似合う。彼も同じく様子がおかしい。狼狽えたような、なんだか泣きそうな顔をしている。
そのまま、ずんずんと彼は真っ直ぐ、彼女のいるレジの所へ。そっと、しかしまるで彼女を逃がさないかのように素早く手を伸ばし、指と指を絡ませる。
「探してた、ずっと、探してたんだ……」
涙をこぼして、彼女を見つめる目はどこまでもやさしくて、愛おしいと全力で叫ぶようで。
アルバイト仲間も思わず貰い泣きをしてしまった。この2人にどんな関係はあるか分からないのに、何故か感動してしまったのである。
「あの、彼女を少しお借りしても?」
「どうぞ!!!大丈夫です!!!」
「えっ……」
彼女は混乱していた。もう会えないと思っていた幼なじみが目の前にいる。あの時より身長も伸びているし、肩幅だって広くはなっているけれど。
あの日から忘れたことのない1人がそこにいた。
気付けば、あれよあれよと店から連れ出されて、店の裏に回って、そのまま炭治郎に抱きしめらていて驚く。肩に炭治郎の顔がぎゅっと押し付けられ、髪の毛が擽ったい。あ、そういえば炭治郎ってめちゃくちゃ鼻良くなかったっけ?さっきまで忙しくて動きまくってたから、汗臭くない?なんて考えながらも、黙って炭治郎の背に手をやる。何せ彼女も混乱しているから、何て話せばいいのか分からない。炭治郎が黙っていたのは恐らくちょっとの時間であったろうが、何時間にも感じられた。
「あの日、皆で向日葵を見に行って、次の日も会えるって思っていたのに、君はいなかった。おじさんもおばさんも、死んでいて。血の匂いしか、なくて。でも君の死体はなかったから、だから、俺は君を、君を探してたんだ。絶対君は生きてるって、絶対君を迎えに行くって!」
長かった、長男だったから頑張れたと続けながらさらに抱きしめる力を強くする炭治郎。長男理論?なんだそれは?
「……でも、"これ"はなんだ?」
顔を上げ、彼女の制服のエプロンに付けられたネームプレートを撫でる。そこに書かれた名前には一切炭治郎は見覚えはない。そのはずだ、そこにある名前は組織によって用意されたものなのだから。彼女は困った。また別の意味で何て話せばいいのか分からない。きっと炭治郎は一般人で、自分のように夜な夜な手を赤に染め、恋人でもない人と寝て騙して、なんてことはしない。組織のことを言って、彼を巻き込みたくなかった。大好きな彼に、犯罪者な自分を知られたくなかった。
どうやって切り抜けようか。幼い頃から頑固というかなかなか譲らないところがある彼のこと。曖昧な答えでは決して、はいそうですかとはならないだろう。
じっと見つめてくる炭治郎の視線に耐えきれず、どうしようかと頭を悩ませていた。
ピロン。
緊迫した空気を壊したのは、炭治郎のスマートフォン。ジーンズのポケットからそれを取り出し、画面を見つめる。はあ、ため息一つ。
「ごめん、仕事でもう行かなくちゃいけなくて……。また、ここに来るから。またな、 」
最後にいっとう優しく、昔の名前を呼んで、炭治郎は去っていった。結局何も言えずに終わってしまったやら、また会う気でいるのかコイツやら考えることは多くあるはずなのだけれど、彼女の胸中は喜びでいっぱいだった。あの日から奪われて、呼ばれることがなかった名前。炭治郎が、自分を忘れずに名前を呼んでくれた。それだけが全てだった。
ホテルの大きいホールを貸し切ってのパーティ。豪華な内装、豪華な食事。組織と協力関係にあるという財閥が開催したもの。参加者ほとんどがその手の者である。彼女がこのパーティに出席している理由は1つ。任務だ。昼の炭治郎と遭遇の後に届いたメール。彼女がいる組織と敵対関係にある鬼殺隊?のメンバーがこのパーティに潜入しているらしい。誘惑するなりなんなりで、連れ出して眠らせるかして、私か組織で情報吐かせろ、といった内容であった。殺せ、と書かれていなかったことに安堵して、前の任務みたいに眠らせて渡せばいい。情報吐かせろ=拷問=結局殺せみたいなものだけど、自分が殺らなくてもいいんだ。
アイツは殺人になれた、みたいなこと言ってたけど、そんな訳ない。
肉を斬る感触、吹き出す血飛沫の匂いや生暖かさ。幾度身体を洗っても、いつまでも血がついているような不快さに慣れるわけがない。
ああ、早くこんなこと止めたい。鬼殺隊か何か知らないけど、早くこんな組織潰してくれればいいのに。文句ばかりで、自死を選ぶことも、組織を裏切ることもしない臆病な自分にそう思う権利など無いかもしれないが。
再びメールの受信を告げるスマートフォン。潜入しているメンバーの一人の顔が分かった。こいつを釣れ、という訳だ。
にしても潜入がバレてしまうなんて、間抜けな奴がいるものだ。なんて考えは、添付された写真を見た瞬間に消え去った。スマートフォンを持つ指から力が抜け、カランと音をたててスマートフォンが落ちる。数人が不思議そうな顔で此方を見るので、慌ててなんでもない様な顔を繕って拾い上げる。バクバクと激しく脈打つ胸を抑え、もう一度写真を見る。嘘であってくれと祈っても変わらない。そこにあるのは、昼に再会を果たしたばかりの幼なじみ、炭治郎の姿であった。
何で。如何して?たんじろう、が。頭が痛い。このまま任務を遂行したら、炭治郎は死ぬ。殺されてしまう。でも、任務を果たさなければ……。
吐き気がする。壁際に寄ってしゃがみこむ。頭が働かない。次にどう動けばいいか分からない。誰か、誰か助けて──────
「あの、大丈夫ですか?」
優しい声が響く。嗚呼、何故話しかけたの。さっき聞いた声だった。彼のことだから、きっと心配してしまったのでしょう。助けになれないか、なんて思ったのでしょう。
「具合が悪いんですか?部屋に戻った方がいいのでは……?」
顔を上げ、彼と目を合わせる。パーティ用のドレスに派手なメイク。気付かないで、なんて淡い期待も、彼の色を変えた顔を見て崩れ去る。
「君は……」
「そう、私、ちょっと酔っちゃったみたいで」
お酒なんて一滴も飲んでいないけど。炭治郎の鼻はいいから、きっとバレてるけど。
目線を合わせるためかわざわざしゃがんでくれた炭治郎の首に手を回す。身体も密着するように、距離をつめて。
「貴方、私を部屋まで送ってくれない?」
赤く染まった彼の頬や耳をみて、可愛いと素で思ってしまったのは誰も知らないこと。
ホールから出た瞬間、「部屋は?」と聞きながら横抱きにされ思わず目を丸くする。
反射的に鍵を炭治郎に渡す。ありがとうと、彼は素早くしかし夜遅くだからだろうか、静かに彼女の部屋のフロアへと足を運んだ。
部屋に入れば、炭治郎からは軽いキスを額に、鼻、頬、唇と何度も浴びせられる。
これはもしかしてコイツ、一緒にねるつもりなのか!?確かに誘い文句を発したのは自分であるはずなのに、動揺がおさまらない。炭治郎のことだから、手は出さなさそうとか婚前の行為はちょっと……など言いそうなイメージがあったので。
そのままベットの上に降ろされ、炭治郎から見下ろされる。顎に手を添えられて唇に再びキス。背中を浮かせられたかと思えば、ドレスの後ろのファスナーに指をかけられる。
「待って、炭治郎!せめてシャワーあびさ……」
せて、の2つの言葉は彼の咥内へ吸い込まれる。ギラギラと熱量を含んだかのような炭治郎の瞳に見蕩れてしまって。
「誘ってきたのは君だ。シャワーの間も待てない」
がぶりと唇に噛みつかれ、ぐちゅぐちゅと舌で咥内を荒らされる。彼が、自分に欲を抱いているのだと分かる。キスから開放されたときには、息を荒らすしかなかった。どちらのものか分からない唾液がつつ、と流れ落ちる。
「続き、してもいいか?」
今までで一番気持ちよかったキスに、炭治郎の色気にくらくらした彼女はこくんと頷くしか無かった。
その後、行為後に気絶して、目を覚ました彼女は何時の間にか鬼殺隊に保護されており、横には「迎えに行くって言っただろう?約束した通りに、ずっと一緒にいよう」と笑う炭治郎がいたとかいないとかはまた別のお話。