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「ブラック・マジシャンガールで城之内にダイレクトアタック!」

「ち、ちくしょー!またオレの負けかよお!?」

桃子と城之内以外の生徒が居ない教室に、城之内の悲鳴が響いた。二人は机に向かい合って座り、カードを並べて、以前遊戯から教わったマジック&ウィザーズというカードゲームで遊んでいた。アンクも、横で楽しそうにバトルの行方を見つめている。

「遊戯にも勝てねえし、桃子にも勝てねえのかよ〜!」

「あたしは城之内より先にこれを知って、始めるの早かったし。その分カードも色々揃えてるからね、負けてられないよ!」

「もっと強いカード欲しいぜ……。あ、でも詫びがデュエルの相手でよかったのか?」

「そもそもお詫びなんていらなかったんだよ?城之内がなんかやんないと気が済まないって言うんだから」

時は一週間前ほど遡る。城之内が、ある不良グループに加入した事態が起きた。彼を心配した、遊戯や本田、杏子とともに桃子は彼を探しに赴いたのだ。道中に彼の家庭環境や、荒れていた中学時代の話を聞き。そして城之内が友人を守るために加入したのだと知り。土砂降りのなか、皆で探し回ったのだ。結局遊戯一人で助け出したようだったが、この一件でさらに五人の仲が深まったようなそんな気がする……のはいいのだが、タオルや傘も無く雨の中、長時間探し回っていたせいか、翌日桃子は見事に風邪をひき、三日ほど学校を休むことになってしまった。

城之内はどうやら自分が原因であると、罪悪感を抱いてしまったようで、見舞いには行けない代わりにと言って杏子経由でスポーツドリンクやゼリーを渡してくれていた。正直、これ以上して貰わなくても……が桃子の感想だったのだが、なんか詫びさせてくれ!ないならオレを殴れと言い出しそうな雰囲気の城之内に押され、デュエルの相手を頼んだのだ。放課後は教師に見つかり、カードを没収されてしまう可能性があるので、早朝にすることにした。

「だってよ、皆とオレ探し回ってて風邪ひいたんだぜ?杏子さらお前が昔はずっと病院にいたとか聞いてたし、もしこれでまた入院とかになったらオレ、杏子とか遊戯の顔見れねえぜ」

「今は凄く体調いいの、たかが風邪で入院なんてしないから!」

でも、どうして遊戯の名前が出たのだろうか。杏子は肉親であるし、申し訳なくなってしまうのは分かるけれど。幼馴染だからかな。なんて内心首を傾げる桃子を見透かしたようにアンクは溜息を吐く。

『惜しいわね……。自己肯定が低いというか、鈍いというか……』

「?」

鈍いは心外だ。どう見ても好きオーラが漏れている遊戯に気付かない杏子のほうが鈍感ではないだろうか。

「急に静かになってどうした?」

「あ、ううん、何でもないの」

少し慌てて、話を誤魔化す。幽霊と話してました、なんてあまり人に気軽に話せるようなことではない。
そこで桃子はずっと城之内に言いたかったことがあったのに、タイミングを逃してしまっていたのを思い出す。

「そうだ、城之内」

「なんだ?」

「あたし、城之内に謝りたかったの」

「え?別にお前になんかされた記憶ねえけど」

「直接言ったり、した訳じゃないよ。でも謝らなくちゃいけないと思って。……一週間前、城之内を皆で探してた時さ」

「……嗚呼」

「遊戯が、殴られた時にね、城之内が知らんぷりしたでしょう。その時に、最低とか色々思っちゃったの。城之内が、遊戯や他の人たちのためにあの人たちの元に行ったのに。……勘違いしてしまってごめんなさい」

そう言いながら城之内に向けて頭を下げる。これを態々言って、余計に彼を傷つけるかもしれないとも思ったけれど、言いたかったのだ。自己満足なのかもしれないけど。

「謝んなよ!オレも、アイツのことすぐ殴ってやりゃ良かったな……。あ、いや、すぐ殴ってたらお前らも危なかったか……?まあ、もう終わったことだしな」

「えっと……」

「もっかい言っとくけどよ、気にすんな。昔は、思われてたみたいに最低だったかもしれないし、遊戯のときもからかってたし。すぐ庇えなかったし、そう思われても仕方ねえよ」

「でも、友達のために反抗したんでしょ?ボロボロになってたけど……。城之内のこと、凄いと思ったの。真っ直ぐだなって」

ーーずっと城之内を信じていた遊戯。泣きながら、お互いのことを呼ぶ二人。眩しいなあ、なんて少し場違いなことを考えてしまった。

「あたしも、友達にちゃんとなりたいってそう思って。なんていうの?区切りみたいなその……吹っ切れるためみたいな……」

段々声が小さくなっていく。桃子の人間関係はほぼほぼ杏子と遊戯で完結されてしまっていた。それは本人の性格や幼いころの状況が関係しているが、桃子自身治す気もなかった。が、その弊害がここに現れている。上手く言えない……なんて言えばいいの……?頭の中はハテナでいっぱいで、城之内も全く何も言わないので、心配になり、彼の方を見る。

「え、お前オレのダチじゃなかったのか!?」

「え、友達だったの!?話すほうのクラスメイトじゃなくて!?」

「それはもうダチ」

「そうなんだ……」

「そうだぜ、オレたちはもうダチ!とっくにな!……おいなんで顔隠すんだ!?」

「な、なんか照れてしまって……」

熱を持つ頬を手で隠す。城之内も、知らず知らずにかました、青いやり取りに気付き、口をもごもごする。一連を眺めていたアンクは爆笑を隠そうとしない。赤い顔をする二人と幽霊一人。微妙な空気が教室を満たす。

その時ガラガラと音を立て扉が開く。二人と+αの視線がそこに向かう。

「あ、二人ともおはよう」

「「ゆ、遊戯!?」

思わず時計を確かめる。あとちょっとで他のクラスメイトも気始めるだろうなという時間だった。しかし、遅刻ギリギリ回避が当たり前な遊戯がこの時間に来るのは以外だった。勿論、間に合って来る日もあるのだが、こんな早い時間は意外だったのだ。

「よ、遊戯。早くないか?」

救世主と言わんばかりに話しかけていく。

「そっちこそ!ボクは早く起きちゃってさあ。そういえば二人が朝からデュエルするって言ってたの思い出して来ちゃった」

「あ、デュエル!」

「そういや負けてばっかだったな!よっしゃ、もっかいだ!今度こそ勝つ!遊戯はオレにアドバイス頼む!」

「城之内にアドバイス!?ずるい!あたしにもアドバイスして!また連勝してやるんだから!」

「二人とも落ちついて……!って、なんか二人とも仲良くなった……?」





陽光