大いなる野心家の最期


息が詰まった。
まさか、本当に此の日が来る等、考えても見なかった。
一気に力が抜け、手から滑り落ちた電話。物音を不審に思った龍太郎は覗き、電話機から垂れ揺れる受話器を握った。
「時恵。」
そう問い掛けた時恵の顔に言葉を無くした。強張り、血の気を無くした侭放心する時恵の顔。
「嗚呼。」
悲鳴にも似た声を出し、其の場に崩れ落ちた。
「時恵っ」
「そんな…、嗚呼…。嘘ですわ…」
真青な唇をがたがた震わし、目は挙動不審に動いて居る。
『御嬢様…?御嬢様っ?……切れたのかしら…』
受話器から漏れた声は聞き覚えがあり、即座話し口に龍太郎は顔を寄せた。
「私です、本郷。」
『嗚呼、龍太郎様で。』
静かに頭に入り込んだ言葉。鬱々と降る雨が今日は上がり、曇り空ではあるが鳥が鳴いていた。後で散歩に行こうと、数分前に話して居たのに一気に暗雲が龍太郎の身体に落ち、自分が何を聞かされて居るのか判らず、眼球を揺らした。




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