マシュマロ


でかい包みが届いた。何かを頼んだ記憶は無いのだが、自分宛。送り主の名前は無く、しかし場所で判った。
「名前を書け、名前を。」
文句を云い乍らも、包みを開ける。
中を見て、首を傾げた。白い小さな塊が、小分けにされ入っている。一つ掴むととても柔らかく、ふわふわと頼りなかった。
せめて文の一つでも入っていれば良かったのだが、生憎入ってはいない。名前も書かず、此れが何なのかも判らない。唯白い、柔らかい塊。
其の弾力からして跳ねるのかと思い、床に一つ落としたが何も無く、もう全く何か判らない。
今度は強く押した。ぐにゃりと潰れ、気持が悪い。
「何なんだ、此れは。」
親友の意図が判らない。何を思ってこんな物を送り付けたのか。
「説明をしろっ。」
白い塊に叫んでみたが、何も変わりはしなかった。
押し潰した指が、べとつく。
鼻を近付け、匂いを嗅ぐと、仄かに砂糖の匂いがした。
「砂糖……」
そうか、此れは砂糖なのか、と湯気の立つ珈琲に入れてみた。瞬間其の白い塊は溶け、驚いた。
「何と。」
素晴らしい。英吉利にはこんな洒落た砂糖があるのかと感激し、調子に乗って二三個入れた。そうして、飲んだ。
「む…っ?」
体に電流が走ったかと思う程、旨い。此れは旨いと、同じ物を作った。
一人はしゃいでいる中、妻の冷めた視線が何時の間にかあり、少し驚き、恥ずかしくなった。
「楽しいですの。」
「あ、いや。」
楽しいけれど、認めるのが嫌だった。良い年扱いた男が、砂糖如きではしゃいでいる等、羞恥プレイも良い所だ。
「何かすら、此れ。」
そう云って、箱から一つ塊を取り、飲めるのだからと口の中に入れた。
不味い。
時恵は甘い物が嫌いだ。大嫌いだ。
其れなのに口に入れた。自分でした事だから、如何する事も出来ない。唯唯時恵の変化を見ていた。
「う…ぐ…っ」
毒を盛られた人間の様に呻き、口を押さえる。俺にとっては好物だが、時恵にとっては毒其の物なのだろう。慌てて目に止まった珈琲を流し込む。しかし此れも、其の塊が入っている。
「いやぁ…っ」
更に喚き、台所に走った。
そんな時恵を見、そうか、食べれるのかと、口に入れた。
歓喜の震え。
柔らかい其れは俺の口を蕩かせた。何て素晴らしい物なのだろう。
「旨い、旨過ぎる。」
カステヰラも捨て難いが、此れも良い。順位を付けろといわれれば、カステヰラを抜き確実に一位に躍り出る。
「しかし、チヨコレヰトも、捨て難いな。在れは旨かった。誰か送ってくれないだろうか。例えば拓也とか。」
そんな事を呟き乍ら、白い塊を無心に頬張った。




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