雨
雨の音が微かに聞こえる。眠っていた時恵は、そんな気配がし、目を開けた。
「嗚呼、矢張り。」
溜息。洗濯物を干して居ようが、手伝いがするので、溜息を吐く必要は無いが、溜息が漏れた。
「あんなに、晴れて居たのに。」
気付いた。今朝は晴れていた。雨が降るとは誰も思ってはいない。
「龍太郎様。」
即座、龍太郎の顔が浮かんだ。
在の性格だから、傘も馬車も使わない筈。構わないと笑う筈。
時恵は慌て、部屋を出、階段を下りた。
「時恵様っ。何方へっ」
其れに慌てたのは、洗濯物を取り込み終えた手伝いだった。構わず無言で、ドアーを開けた。
いや、開いた。
「おや。御嬢さん。」
「御免遊ばせ。」
行き成り飛び込んで来た時恵に、驚いた顔をする龍太郎。つい、昔に戻ってしまった。
「こんな雨の中、急いで何方へ。」
「あ、いえ…ね…」
「御急ぎでしたら、外に馬車がありますので、御使い下さい。」
龍太郎の身体は、濡れてはいなかった。時恵は、力が無くなり、龍太郎に身を預けた。
「龍太郎様…もう。本当に。」
「何だ。」
「てっきり、濡れて帰ってらっしゃると。ですから、ワタクシ。」
口籠もる時恵をそっと抱き締めた。
感謝と愛情を込めて。
「有難う。」
雨の日は、愛情を確かめるのに最適だ、と龍太郎は心の中で笑った。
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