白蓮
「ドギーっ。ダディ、犬だよっ、犬っ」
明るい琥珀の言葉に拓也は顰め面を向けた。
真白な尾は地面に伸び、鼻先は琥珀に向いて居た。
「犬ぅ?こら、狼だ。全然違うだろうよ。」
「ウルフ?犬じゃないの…」
悄気るが、琥珀に犬と狼の違いは判らなかった。座らないの?と、四足をしっかりと地面に付ける白蓮に琥珀は聞いたが、自分依り下の存在が居る場合、狼に座る習性は無い。
「嗚呼、犬じゃない。狼だ。オオカミ。ほれ、云ってみろ。」
「オーカミ。」
「狼は云えんのな。」
呆れ、白蓮と遊ぶ琥珀に背を向けた。
「其れで?何で又、狼何ざ飼う気に為ったんだよ。」
拓也の問いに龍太郎は首を捻った。
「貰ったんだ。仕様が無いだろう。」
「貰った?在れをか?」
子供は好きだが、動物は如何も好きに為れない拓也は呆れ、額を叩いた。
「御前も、大概御人好しだな。」
「御前に云われたくない。」
「俺の何処が御人好しだよ。大金積まれても動物何ざ飼いたくないね。」
「でも子供は貰っただろう?」
「動物と琥珀を一緒にするなよ。」
怒りを見せた拓也に、おお怖い、龍太郎は怯えた振りをした。
獣の荒い息遣い。視線を為ると白蓮が拓也の顔をじっと見て居た。
「うわ…っ」
足に触れ様とする白蓮、慌てて椅子の上に足を乗せた拓也に、二人は笑いを向けた。
「もう…、怖ぇよ…。滅茶苦茶でけぇじゃねぇかよ…」
言葉は巧く判らなくとも、拓也が怯えて居るのは判った琥珀。
「噛まないよ。」
「噛む噛まないの問題じゃねぇよ…。連れて来んなよ、龍太郎様よ…」
「琥珀、可愛いか?」
聞かれた言葉にきょとんと目を向ける。最近何となくだけれど、日本語が判る様に為って来た琥珀は、大きく頷いた。
「カワイイっ」
「そうか、良かった。」
笑顔の龍太郎と琥珀に免じて、白蓮の存在は目を瞑ろうと、大人に為る覚悟を決めた拓也であった。
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