海軍元帥・加納馨


小さな島国であり乍ら、何故日本はあんなにも強いのか。其の理由は簡単な事、二人の“修羅”と呼ばれる人道外れた畜生が存在した。
陸の黒き修羅に、海の白き修羅。
帝國軍海軍、加納馨。十九歳と云う若さで元帥の地位に躍り出た。
其れは決して、能力だけでは無い。陸の修羅同様、後ろから押される強い力も兼ね備えて居た。
彼の父も又、海軍元帥だった。其の父死後、躍り出たのだ。
中には、気に食わない者も居るが、そんな者達は加納の右腕に容易く消された。
容姿端麗の繊細な其の顔は、狐の能面の様に微笑み、其処に生気は無い。切れ長の細い目は、眼鏡に塞がれ、薄い唇を何時も上げて居た。
白女狐。
其の見た目から付けられた渾名、付けたのは云う迄も無くもう一人の修羅だ。肩迄伸びる髪を潮風に靡かせ、喋らなければ女と間違えそうな程美しく、其れでも軍服が似合うのは、身長の為であろう。白い其の軍服は、加納の繊細な顔付きを一層際立たせる。そう作られたのが、今の軍服なのだが。
父の死後、元帥として躍り出た加納の為に、其れ迄黒かった元帥の服を白に変えた。確かに此の顔なら、黒依りも白が似合う。
甲板の上で良く響く其の靴は、陸では不快な音を立てて居た。ごつごつと、まるで骨が打たれて居る様な音で、余り良い物では無い。
残虐非道な、海の修羅。其れが、加納だ。
陸の修羅とは、滅法相性が悪い。両軍開設時から互いの軍は仲悪く、加納の代に為ると、其れは一層強固な物と為った。父親の代では仲を取り持つ存在があったが、今では「今更仲良くしてもね」と誰も取り持ちはしない。姿を見れば、啀み合い、腐す。
口癖は「おやまあ野蛮ですねぇ、陸軍さんは。全く全く」。何かと因縁を付けて居るのは、加納の方である。
一つ木島と違う所を上げるとするなら、加納は自ら軍艦に乗り、指揮を仰ぐ。自らの目で敵艦を見、砲撃を促す。其の姿に魅せられて居るのは、何も海軍だけでは無い。陸軍の中でも、魅せられている者も居る。本郷龍太郎も、其の内の一人だ。
長くしなやかな腕を振り、砲撃開始。航空隊や魚雷、大砲を飛ばす。
兵の事を、子供達と呼ぶ。
「行ってらっしゃい、ワタクシの可愛い子供達。」
其の言葉と共に、無数の命が散って行った。
全ては御国の為。美しき、元帥の微笑みの為。
皺一つ無い白い軍服は、全てを魅了した。




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