My Favorite Sweet Girl.


貴女は可愛い。其の琥珀色の細く柔らかい髪はまるで糸の様。私の荒んだ地獄と云う心に、一本垂れた。
掴んでも、良いのですか?
一人占めは、駄目ですか?
垂らされた一本の糸を、周りは求める。
嗚呼、いけません。
矢張り、貴女の垂らす糸は、私だけの物で無いと。
「一寸遊ぼうって云ってるだけだろう?」
「君さ、混血?綺麗な髪してさ。」
「違う。日本人。」
「嘘云えよ。日本人が金髪かよ。」
「金髪じゃない。琥珀色よ!」
「何人でも良いからさ、遊ぼうよ。」
「用事があるって云ってるでしょう!?分からず屋!」
貴女の振り上げた手は、顔面に直撃。掴まれた腕。
嗚呼、いけません。
貴女に触れて良いのは、私だけ。
私以外は、赦しません。
「目に当たったんだけど。」
「離っ」
「其の汚い手を御離し為さい。貴方方、陸軍中尉の娘に下世話な事をして良いと?」
貴女に触れた此の汚い手、へし折ってしまいましょうか。そうすれば二度と此の様な悪さは致しませんでしょう。
此の白の軍服。知らないとは、云わせませんよ。日本人ならね。
「か…加納…元帥…」
「嘘だろう…?何で海軍元帥が。」
「海軍基地の付近で此の様な野蛮行為は止めて頂けますか。陸軍さんみたく幽閉致しますよ。」
此の男達、何かおかしいと思ったら、豪く目が据わっている。昼間から酒を飲み、此処が何処かも判っていらっしゃらない。
此れだから、煩悩の塊は。
「申し訳御座居ません…直ぐに…」
「腕を、離してやって下さい。御願い致します。」
酔いが冷めた様な口調。
嗚呼、詰まらない。
其の様に簡単に謝っても、貴女に触れた事、赦す訳、無いでしょう。
ですので、もう二度と悪さを働かない様に、此れは罰です。
「ふふ。不自然に、右腕が伸びましたね。」
肩の関節を外す事位、私にはたわいも無い。
「早く医者に行かないと、其の侭の姿になってしまいますよ?」
「済みません…」
「判れば結構です。」
貴女が唯の陸軍中尉の娘であれば、私は見て見ぬ振りをします。陸軍の娘が、いえ海軍の娘であろうが、如何され様と、私には全く関係は無いのです。
貴女だから。
私に糸を垂らした貴女だから。
どんな事があろうと、此の糸は私だけの物。




*prev|1/2|next#
T-ss