Jack-o'-Lantern‐狐火


結局私がしたのは何方だったのか、庭を眺めて居る彼の姿を見ても今一つ判らない。ベッドの様に置かれる棚の上には眼鏡があり、朝日を受けていた。キラキラと硝子が光り、綺麗だった。
昨日の夜の事を思い出そうにも、思い出せ無い。自分と母親が同じにしか思えず、汚れる、とはこう云う事なのかと、彼を見た。
私の視線に気付いた彼は庭から顔を離し、薄く笑う。眼鏡は無く、縛られた髪。彼が、違う人間に見え、何故か私はそんな気も無いのに笑った。
「身体は、大丈夫ですか?」
「ん…?」
「昨日はその…無理をさせてしまいましたので。」
少し焼けた肌を赤くし、彼は云った。
私は、思う。
「馨さんって。」
ベッドの中で彼は無言だった。其れを云うと彼は瞬きを繰り返した。
「普通は、無言では無いのですか?」
まるで私が普通では無い様な言い草。記憶にあるのは、母親と客の淫らな会話。
「そう、だね…」
私は俯き、其の侭彼と目は合わせず背を向けた。



ねえママ。
私がしたのは、セックスに限り無く近い交尾だったよ。




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