受胎告知は堕胎宣告


夫は一体何時間、自分を快楽の渦に回す気だろうと、琥珀は何度目かも覚えていない絶頂を迎えた。馨は一度欲を吐き出し、其れから又しつこく琥珀を愛でている。時計の短針は、もう直ぐUに重なろうとしていた。眠くは無いが、達し過ぎて疲れている。馨を抱き締め様にも力は入らず、シーツの波に泳いでいた。無敵な修羅は体力迄無敵なのかと、疲労の濃い息を吐いた。
痺れる足が屈折し、両膝に手を置かれた。此れで最後にしてくれと琥珀は閉じた目に願いを込め、馨を受け入れた。一度受け入れ、熱く解れた其処は、容易く馨を飲み込んだ。やわやわと入口付近で遊ぶ。
焦らす様に少し入り、入ると出た。真ん中迄入ったと思えば、又入口付近に戻った。奥を突かれると痛い。琥珀の身体は、いや、馨を受け入れる其処は、馨の物を汚い物と認識しているのか、奥から愛液とは違う白い液を送り出した。
ずくりと腹に痛みが生じ、馨が奥迄入って来た事を確認した。何故こんなにも痛いのだろうと琥珀は考えるが、痛いと云う事も聞く事も出来ない。
「そんなに突かないで。」
精々云えて其れだけだった。
馨は動きを止め、横を向いた侭云う琥珀の頬に唇を乗せた。足を持ち上げた所為で更に深く刺さり、痛みが増える。一層のし掛かる馨の体重。
「けれど、こうしなければ、全てで琥珀を感じられません。」
此の二人は、寸法が合っていない。琥珀は短く、馨は長い。琥珀に合わせれば馨の快楽は中途半端で、馨に合わせれば琥珀に快楽は無かった。当然、此の二人の行為は後者だ。痛いとも云えず快楽も無く、何故夫は男なのだと琥珀は唇を噛む。此れさえ無ければ完璧な男なのに、そう思う。
荒々しく突かれ、痛みが麻痺し始めた。悲鳴に近い琥珀の声。馨は勘違いし、其れが良いのかと又荒々しくなる。けれど琥珀の表情は曇るばかりで、快楽とは無縁だった。
母親があんなに声を荒げていたのは何故か、琥珀は鈍痛に身を投げ出し考える。
「琥珀…」
馨の吐いた息は首筋に熱く篭り、一気に奥を突いた。強く胸を掴み、耳に噛み付く。其の時、鈍痛の中に微かな快楽を琥珀は感じた。小さく悲鳴を漏らし、爪先でシーツを乱した。
息の様に熱い精液を感じた琥珀は小さく瞬きを繰り返し、今のが其の快楽か考えた。
欲は出した筈なのに馨は動かず、中で縮んでゆく過程を琥珀は身体に覚えた。
「馨さん…?」
抜かないのかとは流石に聞けず、やんわりと馨の二の腕を触った。
「もう少し、此の侭で…」
腹が脈打つ度痛みは柔らぎ、琥珀は漸く馨を抱き締めた。
「好きなだけ居て…」
此の後馨は自身を抜かず、其の侭眠りに落ちた。


復讐と云う命が、此の日に産声を上げた。




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