エ‐sister‐ス


くすんだ便箋に涙が落ちた。二十年近く昔の便箋は、パサつき、けれどしっかりとした色で思い出を放映した。
在の時拗ねたのは当然よ、黒様に勝てっこないんだから。でも、私を一番にして呉れて有難う。
大きな目で私を見て、沢山笑って、ふわふわ飛んで……本当に妖精みたいだった、貴女。
「琥珀、琥珀……」
私も貴女が大好きよ。
ねえ、覚えてる?貴女が結婚した日。少なからず私は、彼に嫉妬して居たのよ。だって本当に好きだったんだもの、貴女と一緒に居るのが私じゃないなんて、凄く悔しかったわ。早々に離婚して仕舞え、なんて云ったけど、貴女が不幸に為るのは嫌、だけど私以外と倖せに為るのはもっと嫌。もっとずっと、嫌だったのよ。
星が何処からでも見えるのは遠いから。近い景色は直ぐに見えなく為る。だからかしら、貴女はずっとずっと、星より遠くに行って仕舞ったわ。
貴女は私が見えない位置に行った、私は其れをずっと見てた。
覚えてる?英吉利に舞台を見に行った時、貴女凄く奇麗だった。最後に私に気付いて呉れたわよね、そして変わらない笑顔で、観客に見せる振りして、私にだけ手を振って呉れたわね。
凄く嬉しかったの。
在の香水瓶を未だ持って居て呉れた事も。貴女にはもっと良い物が買えるでしょうに、持ってるでしょうに、嬉しかったわ。
其の晩、興奮で眠れなかった程よ。勿論、貴女と一緒に居たってのもあるわ。昔と変わらないで、酔っ払って、二人で床に寝て、詰まらない事にけらけら笑って足ばたつかせて……何時寝ても不思議じゃない加減だったけど、とてもじゃないけど勿体無かった。
貴女が目の前に居る、其れだけで私、とても倖せだったの。
貴女の倖せが私の倖せ、ずっとずっとそう願ってた。
貴女が倖せなら、私は其れで良いの。例え此の先、一生貴女に会えなくても。
「大好きよ。大好きよ、琥珀…」
例え一生不幸でも。
私は墓に縋り付く事しか出来無いの。其れが許された事さえ、倖せよ。




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