エ‐sister‐ス


「何此れ…、気持悪ぃ…」
帰宅したダディに、黒様からの手紙を見られた。本来なら親でも見てはいけない秘め事、人の手紙を勝手に読むとは躾の為ってない!なんて失礼な方!…テーブルに置きっぱなしのあたしが悪いのだが。
「どうか嗚呼、其の御声を聞きたいわ。……病んでんのか?此の女。」
「病んでないッ」
「病んでるだろ、此れは。」
取り返そうと必死に腕を伸ばすあたしを、ダディは腕と足で防御する。ダディの大きな手で顔面掴まれ、長い足で身体を挟まれ、身動き取れない。上体をソファから垂らし、文面を声に出し、妙に作った声でけらけら笑う。
「在れは先月の集会でしたかしら、貴女を一瞬見ましたの。そうしてアタクシ、身体に電気が走ったのを覚えてますわ。…何此れ気持悪ぃ、一見も馴染みもねぇよ。」
「止ぁめぇてぇ…」
「御人形が動いて居るかと、アタクシの目は離れませんでしたの。セイラも御人形に見えますけれど、貴女程御人形な方は………へぇ、セイラちゃん。セイラちゃん見てぇ。寄附して遣るからセイラちゃん見せろ。」
「セイラ様を汚さないでぇ…」
其れから数分、総数五枚の手紙をダディは読み上げた。其の間あたしは死にたかった、一生分の倖せを使い果たした結果だと呪った。然し何でったって此の父親はサドなのか。悪趣味としか云い様が無い。
「返事は“勿論御姉様、ワタクシの操捧げますわ”“セイラ様の操はワタクシが頂きますわ”て書けよ馬鹿娘。」
「嫌だよッ」
「暇だから俺が書いて遣る。」
「止めてぇ…ッ」
そんな手紙渡したら変態女のレッテルが卒業迄付き纏い、すみかちゃんは疎か、愛子迄逃げるかも知れない。迫害された娘(コ)を見た事あるが、悲しい人生で、中には耐え切れず転校して仕舞った娘も居る。
「愛子に書け、愛子。」
「書くよ…」
「浮気して御免ね、でも俺の一番はハニー、君だよ。君以外眼中に無いの、君、知ってるだろ?大丈夫、君以外に俺の息子は反応しない。今も……いや此れは幾ら馬鹿とは云え娘の手前だ、止め様。」
「凄くヘンリーっぽいよ。そして変態が凄いよ。」
忙しい、本当に忙しい。
夕食済ませ、何時もなら一時間掛ける風呂を十分で済ませ(此れで知ったが、あたしは何に一時間掛けて居るんだ)、九時に部屋に行った。
机に便箋を大量に乗せ、在の勢いだ、他の妹や御姉様に知れて居るだろう、愛子やすみかちゃん、他関係者への弁解手紙から取り掛かった。似たり寄ったりな文章だが、まあ良い、手紙を見せ合ったりしないのだから。
此処迄で日付が変わって仕舞った。眠たいのだが、黒様には即座渡さなければ立場が悪く為る。然し眠い。眠いのだよ、君。ワタクシの様な生徒を認めて下さり、嬉しさ反面緊張で何と御返事したら一番宜しいのか判らず遅れました、とでも冒頭に書き、明後日渡すか考えた。セイラ様の立場が悪く為るかしらん…。
そうこう悶々として居ると、無情にも一時を過ぎた。いかん、宿題を忘れた。が、あたしが宿題を忘れるのは日常茶飯事なので其れは考えない事にした。
「もう良いや、明日書こう。」
黒様に怒りさえ湧いて来た。セイラ様でも充分では無いか、未だ人形が欲しいか、何と贅沢な。
愛子には沢山の御免ねと愛を連ねた。黒様があたしに呉れた便箋五枚では到底足りないが、気にしなかった、だって其れ程あたしは愛子を愛してる。
ずっとずっと一緒に居てね。大好きだよ、愛子。
書き乍ら涙が出たのは、初めてだった。




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