愛玩


机一杯に広がる箱の蓋を開け、其処に現れた物に頷いた。中に入っていた短い棒は振ると勢い良く伸びた。下に畳まれていた布をばさりと広げ、おお、と溜息が漏れ聞こえる。棒の先に付いている玉を外し、其処から筒状になっている布の箇所を入れ、又玉を締めた。
「素晴らしい…」
自分の姿をすっぽり隠す大きさの英吉利の国旗に溜息を漏らす馨。机の目の前の壁に掛けておけと指示し、椅子に座った。斜めに置かれた日本の国旗と英吉利の国旗が先同士を付け、床に伸びている。中々に良い。
馨は満足の息を漏らすと、今日は此れで仕舞いだから帰って良いと目の笑わない何時もの笑みを向けた。
誰も居ない部屋で国旗を眺めた。毎朝感じる様な熱慾を全身に蓄え、四方のカーテンを閉めた。真暗の中で馨の笑う声だけがくつくつと反響し、今迄こんなに興奮を感じた事は無かった。
先日、彼女の生い立ちを知った馨は、其れから云い様の無い興奮を知り始めていた。日本と英吉利の、血の繋がらない親子。素晴らしい、と馨は呟き、部屋を後にした。




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