軌道修正、してくれたのは君
付き合い始めて半年、マリファナを吸い乍らハロルドは突如云った。
「何時になったら、俺達セックスする訳?」
キースも同じ様に煙りを吐き、さあな、そう云った。
「今、し様か。」
「此の状態で…?」
互いの焦点定まらない目は合った。
「………止め様。」
笑い、足で踏み消すとハロルドは部屋の中に入った。ベッドに寝転び、枕に顔を埋める。
「セックスより、マリファナの方が好き…」
とろんとした目を瞑り、息を吐く。
「俺はセックスの方が好きだけどな。」
吸い終わり、キースも部屋に入った。しかしベッドには来ず、ソファに座りグラスに酒を注いだ。
「俺にも頂戴…」
枕に顔を埋めた侭ハロルドは手を伸ばし、グラスを受け取った。そう、思ったのだが、掴んだのはキースの手首で、引っ掛かった、とハロルドは身体を反転させキースをベッドに沈めた。酒は零れ、シーツに迄染み込んだ。シャツは云う迄も無く張り付いている。
「ヘンリー…零れただろう…」
上に乗るハロルドの顔を直視出来ず、キースは横を向いた。そうだね、とハロルドは笑い、キースのシャツの釦を指先で撫でた。
「着替える?」
「そうだな。」
「じゃあ、俺が脱がしてあげる。」
「え?」
ハロルドの方に顔を向けた時にはもう、釦は全部外されていた。
「ほら、身体起こして。脱げないでしょう。」
其の変わりのないハロルドの声色に、意識している自分が如何かしているとキースは身体を浮かし、シャツを脱いだ。けれど、上から自分を見る緑色の其の目に、息が上がる。
「ふぅん。」
感心した様に息を漏らし、人差し指でキースの鼻筋を撫でた。滑らかに動き、鼻先を通り、唇に触れる。唇の輪郭をなぞり、一周すると親指も加わえ、下唇を掴んだ。
「ヘンリー…」
「んー?柔らかぁい…」
名前を呼んだ癖にキースは言葉を繋げず、緑をゆっくりと青に合わせた。
「嗚呼、そうか。キスね。」
ぎちりとマットが鳴り、キースは初めて受け身でキスをした。キースの背中に腕を回し、下から肩を抱いた。逃げられ無い様に。唇を付き離しする音に紛れ、キースの甘い声が聞こえた。
横に流していた足を浮かせ、キースの足の間に沈めた。しかし酒で濡れていた為、ハロルドは少し笑った。
「最悪…ズボンに染み込んだ…」
「零したのは…ヘンリーだろう…」
熱く甘いキースの声。シャツ越しに伝わる体温。
「ずっと、こうしてやりたかったよ…ハニー…」
額と腰同士を強く付け、掛かるハロルドの熱い息にキースは目を瞑り、深くゆっくり熱い息を吐いた。下腹部に感じるハロルドの固い熱に、キースの下腹部も反応した。
「男は、知ってるでしょう?」
腰を沈め、ズボン越しに其の行為を擬似た。
「知らない…男役しか、した事が無い…」
「そう…」
此れは困ったとハロルドはキースから身体を離し、ベッドから下りた。
「ヘンリー…?」
何かを探しているのか、引き出しを手当たり次第漁る。
「無いなぁ…」
「何が?」
「ワセリン。何処やったっけ。」
キースが男を知らないとは思ってもみなかったハロルド。暫く探したが見付からず、又ベッドに戻って来た。小さくキスをし、額を付けた侭大きな目はキースを上目で見た。
「残念だけど、明日迄御預けね。」
「…別に…要らないだろう…」
自分は一番もそんな物を使った覚えは無い。そうキースが云うと、其れは慣れてるから、初めてで無いと痛い、とキースをからかい乍ら脅した。
「キースに痛い思いは、させたく無い。」
俺の気持も判ってくれ。
ハロルドは残念そうに吐いた。けれど、そんなハロルドの声を聞いて、キースはシャツを掴んだ。
痛くても良い、其れでハロルドを知れるならキースは構わなかった。初めて欲しいと欲情した。性欲を満たすだけのセックスは幾らでも知っているが、相手が欲しいと細胞が暴れ回る感覚は知らない。明日になれば消えてしまうかもしれない、だから今が良い。そうキースは掴んだシャツに力を込めた。
「抱いて、ヘンリー…」
俯いた侭云うキースにぎゅっと心臓が縮む。眩暈に溺れそうに心臓は鳴り、ハロルドの手を動かした。
ぞくぞくとした感覚が走る手。全身に広がり、泣きそうだった。
「其れは反則…」
抱き締められ、キースはぞくりと身体を巡る痺れに息を吐いた。
「キース、大好き…」
「俺だって、愛してるさ。ハニー。」
何方が何方に溺れた等、そんなの馬鹿気ている。
だって、恋愛は、二人でする物だろう。
だから、二人揃って、溺れて縺れて、沈んだんだ。
愛と、ベッドに。
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