perverted play U


電話と云うのは、非常に便利である。反面、非常に邪魔な代物でもある。合理的なのは判るが、縛られて居る気分に為る。
誰だったか、人間は時間が余ると余計に仕事をする、云った。電話はまさに、其の手助けをする。
でも、電話だって、仕事の為だけに存在しない。電話だって可哀相だ。
温もりの変わりに声を与える、鼓膜に愛を流し込む、そして愛を囁き返す……。
出来れば直接したい所だが、そうは行かない恋人達も、偶には居るだろう。
其の時ほら、受話器を持って、ダイヤル回して、相手だと思って通話口に唇寄せて…「月が奇麗ですね」何て云って御覧。電話が好きに為るよ。

「やあハニー。」
「何だハニー。」
「愛してるよ。」
「俺も云おうと思ってた、先越された。」
「君に会いたい。」
「俺もだよ。」

同じ事云ってるよね。
でも良いんだ、問題無い。同じ事を思うから電話する。同じ事を云っても良いんだ。
電話の無かった時代は、一体如何遣って、鼓膜に愛を伝えたんだろう。屹度音の鳴る物、オルゴール、何て良いんじゃないかな。和蘭人がどんな気持で作ったかは知らないけど。

「其の音…」
「鼠と猫が、箱の上で追いかけっこしてる。」
「鼠は捕まる?」
「さあ…?」

鼠は俺で、君は猫。
何時迄経っても、捕まらないね…?




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