bully


ヘンリーは確かに性格は宜しく無い。でも本当に性格が悪い訳でも無い。優しく、気立て良く、美しくそしてセクシーだ。
怒ると怖いが、まあ其れは普通に思う。
けれど、ヘンリーは豹変する。
優しい仮面を、べろりと剥がす。簡単に。
「HEY!Honey!」
本を読んでいた俺は、行き成り後ろから羽交い締めにされた。膝に乗せていた、フレンチブルドッグのキングが俺の声に驚き不細工な嚔をした。キングは少し発育が悪く何時も涎を垂らしている。其れが本と俺自身に掛かり、不機嫌に後ろを向いた。
「Hi...Honey...」
「愛してるよっ」
行き成り何だ、其れ位知っている。俺の本をキングの涎塗れにして迄伝える、事ではあるが、だから何だと云いたい。
振り向いた唇はヘンリーの唇に塞がれ、ヘンリーは其の侭服を掴むと凄まじい勢いで俺をソファから引き摺り下ろした。
背凭れがあるのに、だ。
床に叩き落とされた俺は放心し、顎にヘンリーの鼻先を感じた。目に映る喉元を凝視し、何時此のキスが終わるのか待った。
「Admiral Baily, Come on into the bedroom. Now.」
詰まりはセックス。
命令で俺は此のマーシャル殿とセックスしなければならないのか。
「ヘンリー?」
「なあに?」
「もう少し、誘い方ってあるだろう?」
視界一杯に緑色を映し、其の色に欲情した。
「無理かな。」
「何でだよ。」
「今、物凄くキースを苛めたいから。」
ヘンリーの性格を訂正し様。
Bully、苛めっ子だ。
ヘンリーはこうして事ある毎に俺を苛める。学校に良く居るだろう、誰彼構わず通せん坊したり殴って来たりするがき大将が。やってる本人は面白いから良いかも知れないが、される被害者は堪った物では無い。けれど何かあったら必ず助けてくれる、だから嫌いになれない。
ヘンリーは其れと同じだ。
因みに俺は昔から苛められる側だった。宿題を強奪され、落とし穴に落ちたりした。
ヘンリーを見ていると幼少時代を思い出す。特に、わははキースざまあみろ、と云う台詞は俺にはトラウマだ。若しかして、俺を苛めていたがき大将はヘンリー何じゃないかと、恐ろしい矛盾を考える。
「余り、苛めるなよ。」
「如何かな。君、四日前に浮気しただろう。俺、知ってるんだよ。」
緑色は楽しそうに揺れた。
今日のがき大将は、泣いて許してはくれ無さそうだ。




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