bully


寝室に入るや否や、ヘンリーは楽しそうに笑い、手に持つ不気味な物を指先で回す。
「ヘンリー…?」
何処で手に入れた、其の手錠は。俺達軍人はそんな物騒な拘束具等所持せず、尚且使用しない。
「弟がね、警官でね。少し失敬した。知ってるだろう、キース。彼奴等は俺には逆らわない。」
不適な笑顔に俺のマゾヒニムが反応したのは、昔の所為だと云い張ろう。
「嗚呼…、アルバート、だろう。確か…」
「残念、警官なのはジャックだよ。そうか、君は…」
ヘンリーは行き成り手錠を振り回し、顔面擦れ擦れに俺は避けた。其の所為か、勢い余りベッドに落ちた。
「アルの方が、御好みか。」
一卵性双生児のアルバートとジャック。兄のヘンリーと母親のリンダに区別出来ても、他人の俺には区別出来無い。御好みかと聞かれても、区別出来て居ないのだから何とも云えない。
「ヘンリーの方が好きさ。在の二人は俺には区別出…」
「何とでも云え。」
言葉の途中で不快な金属音はヘンリーの呼吸音に紛れ、抵抗する間も無く俺は両腕を固定された。あっという間だった。
「此れが海軍元帥?容易いもんだね。」
「ハロルドさん…?其方の趣味を御持ちで?生憎私は…」
「君みたいな野良犬はこうでもしないとふらつくだろう。」
ヘンリー、御前も気付いて居るだろう。
俺は遠の昔に、御前から伸びる鎖で首を繋れて居る事を。
其れはとても強固で、けれど何処迄も長い。だから俺は、伸びる処迄足を進める。そうして勢い良く引かれ、御前の所に戻って来る。
駄目だなヘンリー。
もっと短い鎖が必要だ。
そう、手錠の様な。
俺には御前の愛と嫉妬が必要だ。捕える鎖と戒める熱い杭が、必要不可欠何だ。
「Jesus...」
「準備は良いね?キース。」
御前の愛で、処刑される気分だよ。




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