夢と思い出


夜間の見回りが一番嫌いだ。真暗な廊下にtorchの明かりが右往左往に動くだけで、奴等は丸で死体の様に部屋の中で寝息を立てる。当然中には、時間感覚の無い奴等だから、行き成り目に入った明かりに奇声を発する。其の声に又奇声が出る。瞬く間に此処は動物園になる。
今日は、皆、大人しく死体になっている。
廊下の突き当たりの部屋の前、此処で見回りは終わる。
ドアーの小窓から中を覗き、振り向いた目は光を反射させた。
「good morning.」
俺の皮肉にヘンリーは鼻で笑い、壁から離れると窓から俺を睨み付けた。
「Bad morning. Mister.」
ヘンリーは夜行性なのか、夜起きて居る。かと云って昼間寝て居る訳では無い。
ヘンリーは、寝ない。
薬が抜け掛けて居る奴等は死体で、なのにヘンリーは生きて居た。理由は簡単だった。寝ると悪夢を見る、故に眠れない。
ヘンリーは寝不足で、眠い眠いと云い乍ら何時もふらふらして居る。
俺は明かりを消し、横の奴が充分に死体である事を確認するとドアーを開けた。毎日俺は、規約違反をして居る。罪悪感は、無かった。
「又入って来た。」
「嫌なら、他の奴に報告すれば良いだろう。」
「何で俺に構うの?」
俺は答えず、笑うだけだった。




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