未だ謎
一週間後、わいは小百合ちゃんに好きやと云った。小百合ちゃんは嬉しそうに顔を緩ませたが、あかんねん、そう頭を下げた。
「八雲君、好きや。ほんまに。」
「何でや…」
小百合ちゃんの言葉等聞いて居なかった。御前はわいが好き何だろう、やらせや。そう思う。
わいは何処迄も、股間に脳が付いて居る男なのだ。
「中学卒業したら、結婚すんねん。」
「へえ、おめでとさん…」
糞が。村に唯一居る医師の息子と結婚するらしい。結局金か、皆金か。世の中所詮金か。チフスかコレラに掛かって死ねと云ったら泣かれた。わいかて、泣きたいのだ。
其れから三日、連続で学校には行かなかった。普段も、週に二回学校に行けば良い様な生活態度ではあるが、連続で三日休むのは初めてだった。敷きっぱなしの布団の上でゴロゴロし、恭子と遊んで居た。其処に茜が妖怪引き連れ来た。
「学校行けや八雲。」
「うっさいわブス。己は早、嫁行けやブス。」
長女三女は嫁に無事行けたが、一番の醜女の次女は、未だ嫁に行けず居る。オカルト信者位しか、相手にしないだろう。
姉は恭子を誘拐し、代わりに茜を置いた。食い物なら未だしも、茜等要らない。帰れと云ったわいに、茜は真横に座った。
兄が云う通り、茜は良く見ると奇麗な顔をして居た。
「小百、泣かしたてほんま?」
「やったら何やねん。説教なら聞かんしな。」
寝返りを打ち、背を向けた。
「なあ、八雲…」
「うっさい、どっか行けや。」
「小百で、マス掻いたん…?」
「…………は?」
掻いては居ないが、茜に教える義理は無い。勝手に想像しとれと枕を投げ付けたが、上手く交わされた。
「其れって、気持ん?」
「痛いもんするか、阿呆。」
感心する茜の息遣いに、わいはふと意地悪を考えた。自分の変態も此処迄くれば、崇められて良いのでは無いか。
布団から起き、胡座を掻くと茜の顔を見た。
「何?興味あんの?」
「興味って云うか、うちは女やし、持ってへんから、まあ興味やな。うん。」
「ふぅん。」
俯く茜の、肩から腰に掛けて流れる髪を指に滑らせた。
「見たいなら、見せたるよ。」
「何をっ?」
行き成り顔を上げた茜と目が合い、身体を反らした。
「何やねんっ」
「八雲こそ何やねんっ、変態かっ」
其処は是非認めて欲しい。茜、何年もわいに絡んで来る割には、わいの事を漠然としか捉えて居ない。変態と云われて居るから、変態だと思って居る。
「見たいてゆうたん、自分やん。」
「ゆうて無いよっ」
じっと見ると、茜は其れだけで黙った。
「奇麗な顔やな…」
「んえ…?」
「あ、今のは一寸不細工や。」
「うっさいっ」
肩に手を置き、キスが出来る距離迄顔を近付けて遣った。する気毛頭無いが、赤面する茜が可愛いかった。
「一寸、足寄せて…」
家鴨座りをし、スカートから少し覗く膝に触れた。茜は一本だけ伸ばし、屈折するわいの膝に乗せた。真っ直ぐ伸びる足に視線を向け、撫でると引っ込め様とした。
「あかん…。奇麗何や、ほんま。」
「せやし擽ったいわ…」
爪で強くなぞると、茜は小さく息を漏らし肩を竦めた。俯く茜の顔を見た侭何度も撫で、下唇を必死に噛む姿に興奮した。
「あかん…」
「何…?」
「立った…」
最悪である。
わいは小百合ちゃんでして遣ろうとしたのに茜に興奮した。自分が思う以上にわいは変態なのかも知れない。
「一寸、出て…」
見せて遣るとは云ったが、半分は冗談だった。半分は本気。茜に興奮したのが許せず、姉の事を考え自分を抑えた。茜が部屋を出たとして、出来る訳は無い。して仕舞えば、某大女優と同等に為って仕舞う。
「せや…其れや…」
思い出し、本棚に手を伸ばした。肉厚な腿を此れ見よがしに晒し、其の真っ白い肌に流れる真っ黒の毛皮、厭らしく濡れた赤い唇を突き出す姿は、まさに至高。何ぞ此のおっぱいは、実に怪しからん。
「あかん…、くらくらして来た…」
興奮が極限に達し、眩暈を覚える。
此れならいける、そう確信した。
「堪らん…、嗚呼もう、神様は天才や…」
其の足を舐め回したい。胸にむしゃぶり付きたい。
男等、所詮そんな物だ。
興奮し切った股間に手を伸ばし、出しはし無かったが着物の中で手を動かした。茜の肩に伸ばして居た腕に力を入れ、背中を強く掴んだ。
「痛いわ…」
「一寸、煩い…」
わいの頭の中には、在のあはんあはんと舌足らずの甘ったる声が響いて居る。其れを茜の低い声で消されては堪らない。何の為に本を開いたか、茜に顔を近付けた侭、視線は本に向けて居た。
「好きなん…?」
「何が…」
「コハク・ヴォイド…」
「嫌いな男が居るか…。ちょぉほんま黙って…」
茜の息が顔に触れる、わいも息も掛かって居る。本に視線を向けて居た、茜の事は見て居なかった。俯いて居るのは判って居たが、其の視線の先に何があるのか自分でも判って居なかった。自慰をするのに、自分のは見ないであろう。だからだ。茜は開けた着物から突き出た其れを見て居た。
「うわ…っ」
「何や、此れ。」
行き成り触れた茜の指に手が止まり、其処で漸く自分の物が出て居るのを思い出した。呼吸する様にする行為は、余り深く考えする物では無いのだ。
茜の小さい指先が先に触れ、垂れる液体を擦って居た。
「何してん…」
「何かなぁて。精液ちゃうよね、在れ、白いらしいし。」
透明な液体を指先に付け、頭がおかしいのか臭いを嗅いで居る。
「何か、甘い匂いする…」
「嘘…」
「少ーしな。少し。」
恭子で、無知がどれ程罪なのか知って居た。指先に付く液体を繁々眺め、何ぞ此の半開きの口は。
「茜…」
「何や?」
笑顔を向けられ、斎藤八雲一生の汚点。申し訳無い、コハク・ヴォイド。
「死にたい…」
手を伝う精液に、精根尽き果てた。小さく喘いだわいに茜は唯笑い、何が起きて居るのか判って居ない。
「ほんま帰って呉れっ」
精液の付いた侭の手で布団を掴み、頭から被った。
「八雲っ?八雲、どないしてんっ」
「うっさいっ、帰れアホンダラッ」
「何で?何?終わったん?」
「うっさいわっ、終わったわっ」
十分前の自分を殴りに行きたい。何を血迷い、茜に其れを見せ様と思ったのか。自分で自分が判らない。
死にたい死にたいと布団の中で陰湿に呟き、小百合ちゃんに振られた以上の虚無感があった。
「八雲ぉ、元気出しなぁ。」
「放っといて呉れ…」
茜の事は良く判らない。
在れだけ冷たく当たり、優しく等した事の無い痴態迄見せた此のわいを、何で追い掛けて来たんか。
気持悪いと思ったのは当然で、茜がわいに惚れた理由。未だ以て、判らない。此れは歴史を探るより、難しく思う。
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