朱雀と鳳凰


白い襖が、赤く染まる。在れは何やったかな、炎を纏ったみたいに奇麗な鳥やった。
朱雀。
せやぁ、朱雀やった。
燃える。朱雀が燃える。赤い鳥が、燃えよるわ。

――御嬢………っ

あたしは好きやった。其の鳥が。せやからあたし、よぅ手放したないから、手ぇ伸ばした。

――御嬢、あかんっ

邪魔せんと、止めてや。
朱雀。
朱雀…。

――御母ちゃあん………っ
――御嬢…っ
――嫌ぁ、嫌やぁ………っ

あたしの鳥が、血に燃える。羽を一つ、一つ落とす。

――誠昭、茜ん事…守ってな…。うちの代わりに、よぅ…守ってな…
――姉はん、姉はん…、あきまへん…あかん…

朱雀が見たのは空だったのか。
青い空に似た龍だったのか。

――御嬢…?御嬢……っ

龍と朱雀は空に昇ろうとした。朱雀は実際、炎の様に血を吹き上げ空に昇った。龍の背中には朱雀の残した炎がべったり張り付き、青い龍が赤い龍に変化するのを見た。

――松、山…
――御嬢に手ぇ出してみぃ、わしの龍が黙っとかれへんぞ。由岐城の宝に触るんやったらなぁ、龍を殺さんかい。わしの龍、赤くしてみぃっ

朱雀は、死んだ。
あたしの大好きな朱雀は、死んだ。あたしを守る龍は死に掛けで、無駄にでっかい手ぇで、頬に付く朱雀の残した炎を拭って呉れた。
赤い龍、赤い鳥、赤い襖、赤い御母ちゃん。
赤何か、大嫌い。




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