田舎事情


都会の方には信じられんかも知れませんが、田舎は何と、他人の家が覗ける特権があるのです。
見渡す限り木、木、山、延々と広がる田園地帯にぽつんぽつんと家がある。
都会の方には信じられんかも知れんが、プライバシー何て物は存在しない。塀何て代物が無いんですよ、田舎は。左右田圃に挟まれた畦道から普通に家が覗ける。暇な親父が寝てるのが見えたりする。家の前を通ると、声を掛けられる。
塀に囲まれていない家等想像出来ますか?
何故こんなにも開けっ広げかと云うと、隣家がかなり遠くにあるので、区切りやプライバシーの為の塀が要らないのです。
だってそんな、東京の御隣さん事情とは違うんですから。御前ん家の犬が煩い、とか無いんですから。
田舎で塀のある家は金持、そう思って頂いて結構です。事実、此の村で塀を所有する家は、村長宅だけでした。茜の、由岐城家が来る迄は。何から何を守るのかは知りませんが、ぐるりと外壁に囲まれて居ます。
都会の方には当たり前の風景ですが、田舎では異様に映るのです。
そんな田舎ですから、都会の方よりは長けて居ます。ええ、性の知識がね。
都会の方は遊びが沢山ありますので、暇を潰すのに困りはしないでしょうが、生憎田舎は何も無い。暇だとするのは一つ、睦言です。
そう、此れが田舎の特権。
都会では金払い見る他人の睦言を、田舎は勝手に覗けるのです。有り難い話ではありませんか。
そんな話を一席。
御付き合い下さい。




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