二束三文の対価
笑った、在の顔が好きだった。私と結婚して、其の笑顔は消えて仕舞ったけれど、私は構わなかった。
貴方が其処に居れば、何も要らなかった。
田舎を捨てて七年。私は、又一人。三人の子供に恵まれたけれど、ちっとも嬉しくない。
其処に貴方が居ないから。
ねぇ貴方。
又、私に笑って呉れるかしら。
又、夢を見せて呉れるかしら。
「母上。」
嗚呼、笑った顔が、まるでそっくり。甘い夢だわ。
「一幸。」
何時迄私は、貴方を抱き締めているのかしら。何時に為ったら、貴方は私を抱き締めて呉れるのかしら。
ねぇ貴方。愛しているわ。
貴方にして見れば二束三文の一時の夢だったかも知れない。でも私には、充分見合った夢なのよ。
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