surr*alisme


「恵御は元気にしているかしら。」
珠子の声に時一は力強く頷いた。若し何かあれば連絡が来る、其れが無いのが証拠だと、荷物を地面に落とした。手配した車を待つ間、二人は船を見ていた。
「アルツト ゲーテ。」
「ん?」
付添人の男は、何やら大きな箱を船から下ろし、日本に着いた時渡す様、宗一から送られていたと云った。箱を地面に置き、蓋を開けると、珠子と顔を見合わせた。
「嫌だわ、懐かしい。」
「あった事に驚きだ。」
日本に居た頃、毎日の様に着けていた鬘。其の下には艶やかな着物が入っていた。
折角日本に居るんだ、菅原時一に戻っても良いだろうと、軍帽を脱いだ。




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