誉め殺し


最近、新の機嫌が良い。其れが折は面白く無く、帳簿を付けて居る新を後ろから蹴飛ばした。
「何、すんだよ…」
そろばんの目が崩れ、やがて終わるという処迄来て居たのに、始めからやり直しだ。
「何でそんなに機嫌が良い。」
折の質問に新はにんまりと笑い、そろばんを振るとあっちに行けと手を振った。
面白く無い。
新の機嫌が良いと面白く無い。
煙管で頭を叩き、散歩をしてくると吐いた。何時もの新なら此処で、馬鹿野郎、店が開くんだ支度をしろと云うのだが、腑抜けた声で、へえへえ行ってらっしぃと云うだけだった。其の返事が矢張り面白く無く、もう一度蹴飛ばし、店を出た。
「兄(アニ)はん、何処へ。支度しはらんで宜しおすの。」
「馬ー鹿。煩い。」
「…何どすの…ほんに…」
入れ違いになった奴に悪態を吐き、からからと下駄を鳴らした。




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