わっちゃ悪くない


新に掴まれた腕を振り払い、折は向き直ると睨み付けた。折が怒る理由のが判らない新は理由を聞いた。けれど、聞かれた本人も何故自分かこんなに苛立っているのか判らない。唯無性に、腹が立って仕様が無い。新が何をし様と勝手だが、自分から離れる事は許せない。新が其の相手と結婚にし、店が潰れ様が如何でも良いが、自分の傍を離れるのだけは認めたくない。
「俺達は、双子だろう。」
「そうだね。」
「じゃあ何で俺から離れ様とする。」
其の根拠と意味の無い理由に、流石の新も眉を顰めた。
「双子だから一緒に居なきゃいけないのか?」
「そうだよ。」
「何で?」
「双子だからに、決まってるだろう。」
益々理解出来なくなった新は息を吐き、頭を抱えた。
昔から、ずっと一緒に居た。幼い頃は確かに、自分が折を守らなければならないと思っていたから傍に居た。けれど今は違う。自分は、折を守る為に傍に居るのでは無い。
此れは、双子の関係では無い。
何時の間にか折が主人となり、自分を縛り付けている。離れない様に頑丈な縄で繋がれている。首、手、足、身体全部を折に縛られている。家を出た、あの時から。
其れを確信した新は急に恐怖を感じ、寒気を感じた。
「俺は俺、折は折。違うか?」
「違うね。俺は新であって、新は俺であるんだ。」
「折は、間違ってる。俺達は、別々の人間なんだ。」
「間違ってるのは新だ。俺達は、同じ人間だ。」
「何で。」
「双子だから。」
又其の話に戻るのかと新は手を振り、此の話は止め様と背を向けた。もう時期、恋仲に会う時間だ。折に付き合っている暇は無いのだ。
「俺は少し出掛けて来る。其の間、公爵と話していて。」
そうしたら少し落ち着くに違いない。そして、又話そう。今の折は気が立っている。とてもで無いがまともに話は出来ない。
「逃げるのか。」
「…逃げる…?何から。」
足を止め、振り向いた新は折の姿にぎょっとした。誰かが使った後置き放しにした剃刀を首に当て、無表情で新を見ていた。
「一歩でも暖簾に近付いてみろ。身体に傷を付けるぞ。致命傷のな。」
階段から其の光景を見ていた雄一は、そう来たかと、手摺に凭れ眺めていた。出た新の言葉。雄一は笑みを蓄え頷いた。
新は折から離れたがっている。其れを折が認めない。我侭な子供と同じだ。
「勝手に死ねば良い。」
「そしたら御前も死ぬぞ。」
「俺は死なない。」
「死ぬさ…」
「じゃあ、試しに死んでみたら?」
ほら、と新は誘導した。
「俺は、新が死んだら、死ぬ。」
「そう。でも俺は死なない。折が死んでもね。」
中々に面白い心理状態ではないかと、雄一は階段を下りた。
「私は帰るよ。浮雲が相手をしてくれないからね。」
雄一の声に新ははっとし、慌てて雄一に近付いた。
「御免。今戻すから。」
「もう良い。今日は帰る。」
「公爵…」
「其の代わり、大門迄送ってくれるか。楼主さん。」
折を見、雄一は手から剃刀をそっと取り上げた。
「楼主を借りるよ、浮雲さん。」
客の云う事を聞かなければならない其の制度に、折は舌打ちをし、挨拶もせず部屋に戻って行った。
折の態度に眉を上げ嬉しそうな顔をする雄一。
「さて、行こうか。」
新の恋相手、興味があって、仕様が無い。




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