黒猫楼
黒猫楼は、他の遊郭と少し違う。全員男というのも有るが、其れだけではない。此処には、大した規則だないのだ。
此処に居る全員、自分から来た。買ってくれと偶に来るが、其れは引き取らない事にしている。嫌々働いて貰うの等、真平御免だ。なので此処に、年季、等というものは存在しない。規則を破ったからという摂関も無い。当然、借金も存在しない。
此処に居る浮雲を除く七人に、何故居るのか理由を聞いても答えは無い。
「女を抱いて金が貰える何ざ、一石二鳥じゃないか。」
「綺麗な着物が着たいから。」
「きちんと布団で寝れるから。冬寒いと嫌じゃない。」
皆、本能に忠実だ。面白い位。
吉原で、大門を出るのは許されていないと聞く。しかし、此処に居る男達は、勝手に出て、勝手に帰ってくる。門番も、許可証を持っているから何も云えない。
逃げたいのなら、勝手に逃げれば良い。俺は何も云わないし、止めない。けど、俗世界に適応しなかったからといって戻って来る事は許さない。
此処に居る奴等の金は、全部俺が管理している。当然浮雲のもだ。欲しい時は何時でもやるので、文句は云われない。唯、自分が幾ら稼いでいるのか判らないでしょっちゅう大門を出て買い物に出掛ける奴は、後から泣く羽目になる。稼いだ金を好きに使う事は良いが、小遣いをあげる程、俺は優しくない。尤も、そんな余裕は、此処には無い。店代として金を取られ、給料だと取られ、俺の手元には大して残らない。公爵が居なければ、此処は存在しないといっても過言ではない。なので、公爵が、しょっちゅう拘留されるのは、此処としても困るのだ。
「赤字だ…」
公爵が来なかったのが悪い。違う。公爵を拘留した軍が悪い。
「ええい、畜生っ。軍等滅せっ」
「嗚呼、穏やかじゃねぇな…」
「旦那…来るなら金位落としていって…浮雲付けるから…」
「男に興味ないから。」
簾佐野恭一の絵等、心の足しになっても金の足しにはならない。逸そ売ってしまおうか。いやいや、其れだけはどんなに貧困になろうとも出来ん。絵は売っても心は売らん。
嗚呼、何処かで聞いた事のある台詞だ。
「公爵…公爵帰って来て…俺…死んじゃう…」
「仕様がねぇなぁ…もう…」
何て世知辛い世の中なんだ。
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