青春エスケープ
何時も以上に機嫌が悪いと聞かされては居たが、本当に機嫌が悪い浮雲に女は笑った。女、と云っても浮雲と大して年は変わらない。所謂脛齧り娘で、親の金で浮雲を買って居た。
――何だよ、選りに選って御前かよ。俺は今、最悪何だ。御前の面何ざ、見た無いね。
――遊ぼうよ。
――では、ごゆっくり。
文句を云う前に新は襖を締め、其れに浮雲は舌打ちをした。浮雲の細い顎に後ろから少女の指が絡み、背中に重さを知った。
――離れろよ。
――客だよ、そんな口利くなよ。
――客って謂うのはな、自分の稼いだ金で買う人間の事だよ。
だから御前は違う、と少女の頭を畳に叩き付けた。痛みで少しばかり顔を歪ませたが、少女は笑って居た。丸で、公爵に捨てられた事を笑って居る様に浮雲は見え、一層力を入れた。無言で押し付けられ、流石に痛いのか顔を顰める。
――判った。謝るよ。遊んで下さい、浮雲さん。
――其れで良いんだよ。
頭を押さえ付けた侭浮雲は、先刻迄公爵にされて居た様に少女の首に顔を寄せた。少し汗ばんだ肌は塩辛く、耳の後ろは熱かった。柔らかい少女の耳朶に蛞蝓の様に浮雲の舌は動いた。此れが成熟した男に慣れた女ならば、熱い息の一つでも漏らす所だが、擽ったそうに少女は身を捩り、笑って居た。
――御前、何時になったら慣れる訳?
――さあ、判らない。ふふっ。
頭から手を離し、少女を後ろから抱き竦めた。耳元で水音が響く度少女は笑い、抱いて居た腕はゆっくりと胸に向かった。年は十六と聞くが、其の胸の膨らみは成熟した女と何ら変わりは無く、寧ろ張りがあり浮雲の手には余った。身八つ口から知る浮雲の体温に、漸く少女は笑いとは違う息を漏らした。
――耳でも充分感じ始めてるじゃないか。
ほら、と胸の張りとは違う固さを持つ先の突き出しを摘み、左右に動かした。
――浮雲…
全身を預け、浮雲の首筋に息を篭らせた。畳と足袋が擦れ合う音が聞こえ、身体に引き寄せられた足が見頃から覗いた。
――俗世界も、随分と派手趣向に変わったな。
紗の黄色生地から見える襦袢の朱色。自分が此処に来る前は襦袢の柄は見せないのが主流であった筈が、二年其処いらで此処同様、俗世界も華やかである。
――又、浪漫スタイルが流行り始めてるんだ…
――浪漫スタイルって、嗚呼在れか。大戦前から数年流行った格好。
鸚鵡の如き原色の派手な着物に、大量の装飾品を身に付けた女達が街を闊歩して居た時代。そんな時代が又来たのかと、白い肌に浮く朱色を浮雲は眺めた。
――袴にブーツは?俺、在れ好きだ。
――嗚呼、其れは流行って無いね。袴自体が流行って無いから。
――原色に派手目ね、成程。
こうして浮雲は、自分の身体と交換に俗世界の流行りを聞く。生憎公爵では、幾ら世間を熟知して居ても、此の少女の様に“少女達の流行り物”を教える事は出来無い。
身八つ口から片方手を抜き、其の侭天井に向かって突き出す膝を撫でた。逃げる様に少女の足は動き、其れを掴まえ、動く事が出来無い様内股に手を滑らせた。
――触ってやろうか。もう、恥ずかしく無いだろう?
――うん、御願い…
教えてくれた礼だと云う様に浮雲の指は少女の秘部に触れ、薄い茂みの中から其れを見付けた。胸と耳に絶えず愛撫を与えて居る筈が少女の其れは未だ柔らかく、濡れ具合も乏しい物であった。
――俺と遊ぶんならな、此処を充分女にしてから来る事だよ。
そう浮雲は云うが、帰れと云う意味では無い。こうして少女をからかうのが、浮雲は楽しいのだ。
何度か陰核を撫で上げて居る内に固さと滑りは良くなり、少女の顔から幼さが薄れて行った。
――俺、最近成長したんだ。
微かな水音の中で浮雲は云った。
――何が?身長?でもちびじゃん。
――馬鹿、俺の商売道具がだよ。ちびって謂うな。
少女はきょとんとした目を浮雲に見せ、一旦浮雲は両手を止めた。一気に少女は声を出して笑い、肩を震わせた。
――笑うなよ。大事な商売道具何だよ。
――確かにそうだ。無いと大変だもんね。
少女の笑いを止める様に唇を塞ぎ、秘部にある手を早めた。くぐもる少女の声に目を細め、一旦口を離し、互いに深く息を吸った。何方とも無く又唇を深く重ね、胸に触れて居た手を秘部にやった。完全に固くなった其れを空気に晒し、溢れる粘液を塗り付けた。
――気持良いだろう…
――うん…
――此の手だって、商売道具さ。
――でも…
――でも…?
――一寸恥ずかしいや…
大きく開かれた足に少女は視線を向け、ならばと浮雲は脱ぎ捨てた侭畳に皺を作って居た打掛を掴み、大きく空中に揺らがすと少女の下半身を隠した。
――此れで、見えない。
――うん。
はにかむ少女に浮雲も少し似た様な表情を見せ、唇を重ねた。打掛の動きと中から聞こえる水音は、互いの息とぴったり同じであった。
――ねえ、駄目、浮雲…
――此の侭イかせる。其の方が入り易い。
本の数分前迄は少女に文句垂れて居た浮雲だが、少女の腰に、はっきりと其の高揚を教えて居た。
――あたしがイッたら、ねえ、浮雲。あんたをイかせられるかな。
――碌すっぽ技無い癖にか?
――今日は出来そうな気がするよ。
打掛が一度大きく揺れ、浮雲の足に絡む少女の足は小さな揺れを繰り返し浮雲に教えた。唇を重ねた侭浮雲は足元に目をやり、少女が達した事を確認した。
打掛がゆっくりと萎み、剥ぎ取ると少女の足元は奇麗に折り重なり、震えて居た。濡れた手を其の侭手拭いで拭き、濡れて居ない事を確認すると、愛らしく頬を染める少女の顔と頭に触れた。
――で、心地好い所悪いけど、如何すんの?
右腕で少女の身体を包む様に支え頬を撫で、左親指で唇を撫でた。肩を縮こめる少女の顔を覗き込み、キッス寸前の距離で浮雲は囁いた。横腹に熱く当たる浮雲の高揚に少女は一度視線を向け、不安を宿した目で浮雲を見た。
――御前は客だから、する必要は無いよ。
したい奴がする事、と一度小さくキッスをし、離れる音を互いの耳に教えた。
――浮雲は、好き?其れ。
――嫌う男が居ると思うか?
小鳥の啄みの様なキッスを会話の中で何度も繰り返し、熱い少女の息は、甘い匂いがしていた。反対に浮雲は微かな酒の匂いをさし、其の匂いに少女は目を細めた。
舌も唇も、酒の味がする。其れに紛れ、煙草の味がした。
横腹に当たる浮雲の其れに手を伸ばし、大事な商売道具、と名の通り、大事に扱った。ゆるゆると動かし、浮雲の反応を見るが相変わらずの全くの無表情で、良いのか悪いのか少女には判らなかった。吊り上がる目は少女の目を見据えた侭、揺れも濡れも見せはしなかった。唯、此の全く無反応な目とは反対に、浮雲の其れは少女の手に反応した。
少しばかり動く浮雲の商売道具。先の方から粘液が少し流れ、其れを親指に知った少女は手を止めた。
――ぬるって、した…
――御前だって、出るだろうが。
――嗚呼、そうか…
納得したのか少女は、唇を重ね、其れが反応する侭に手を動かした。微かな反応だった動きは次第に大きくなり、熱さと固さを増した。相変わらず目は漆黒を少女に教えて居るのだが、息は上がって居た。
――一寸、離せ…
今迄気丈に吊り上がり少女を見てた目が一瞬目尻を細めた。
――何処で覚えた…
少女の身体を押し退け様と腕を突いたが、下から沸き上がる痺れに喉を鳴らす事しか出来無かった。腰を抜け、背中を走り、頭に知った快楽に浮雲は強く目を暝り、少女の悲鳴に似た声も知った。手を伝う熱い粘液に少女は手を離し、顔を顰めると浮雲に掌を見せた。
――最悪…
――俺の台詞だよ…
女なら納得行くが、碌すっぽ無い技と散々貶した少女にイかされ、浮雲の自尊心はかなり傷を負った。少女の指から垂れる精液に舌打ち、紙の上に書いた間違いを消しゴムで消す様に、浮雲は少女の手を荒く拭った。
――覚悟しろよ。
布団では無く、最初来た時の様に少女は畳に倒され、真赤な天井を視界に入れた。高く膝を曲げ、爪で痛い程秘部を弄られた。少女の其処はすんなりと浮雲を受け入れ、互いに深く息を吸った。浮雲の動きに少女の身体は連動するが、喘ぎは聞こえない。其れが少女との交わりで、成長し切れて居ない二人の情事には当然と云えば当然なのかも知れない。
しかし、浮雲が成長したと云ったのと同じに、少女も又、成長して居た。微かな少女と云う時代の快楽の中に、女に変貌する快楽を感じ取った。
――浮雲…、其処…っ
――此処…?
最奥より少し手前、其処に女の快楽を少女は知った。漏れ聞こえた喘ぎに浮雲は口角を目同様に吊り上げ、腰を掴むと自分に引き寄せた。
――嗚呼っ、其処……っ
――此処だな。漸く見付けたよ、御前の良い所………
此れが本当に少女の声なのか疑わしい程、其の声は女の色を蓄え、そして浮雲の男を呼び寄せた。
――良いよ…、最高だよ、浮雲…
――此れが女だ…。此れが…
互いの液と云う液が混ざり合い、畳に強く拳骨を作って居た浮雲の手は伸び、少女の両手首を頭で握り締めた。両腕を固定され、下からは強い快楽、張り付けにされた蝶みたく少女は畳に全身を預けた。行灯の光が霞み始め、顎から垂れた浮雲の汗が開く口の中に落ちた。舌を流れ、唾液に混ざり喉を通る。
――浮、雲………
雲は屹度、こんな気分で空を漂って居るのだろうと少女は思う。聞こえた浮雲の歯軋りに、雲が切れ、やがて光が射すのを知った。
――今気付いた…。御前、服、脱いで無いな…
――何時もみたく外は駄目…。親に知れる…
――判ってる…
互いに、何処に出すか迷って居る内に、少女は行灯の光を見失い、違う光を感じた。内股を流れる熱さに少女は一番強い快楽を知ったが、通り雨の様にさっと引いた。
――俺のは付いて無い…
――良かった…
――御前のは、少し跳ねてる。
嘘、と少女は、水溜まりから跳ねた泥水の様に畳から跳ね上がり、自身の股座を覗いた。
――此れなら平気。間に合わないで、小便を少し漏らしたって謂う。
――御前、幾つだよ。
肩膝立て、其処に腕を乗せた侭浮雲は笑う。
此れは、在れに良く似て居る。
こんな年頃の恋人同士の様な、青く、淡い、しかし何時か忘れる、初恋だ。
屹度二人は、知れず恋をして居た。唯、気付いて居ない、風化される、逃げ出した青い春。
――二度と来るなよ、馬ぁ鹿。
――又来てやるよ、馬ぁ鹿。
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