赤ゐオルファ
胸の膨らみに違和感と不快感を持ち、男として生き始めて三年程経った日。異様な気怠さを知った。妙に身体に熱が篭り、私は風邪と疑わ無かった。
しかし、私は女であると痛感した。
歩いていると行き成り年配の婦人から「一寸貴方」と背中に張り付かれた。私は一瞬、在る種の変態かと勘違いし離れ様としたが婦人の言葉に凍り付いた。
「袴が真赤ですわよ、貴方。」
背中に張り付いた婦人の様に、其の言葉と“雌”と云う絶対は、嫌と云う程私に張り付いた。此れで、何故父が未だ私を肯定しないのか理解出来た。私は未だ、完全では無い。
ならば完全に仕様。
其の夜私は、父が完全に寝たのを確認し、枕元の軍刀を拝借した。父は家で寝たら最後、何が起きても起きない人間だ。そんな父が何故枕元に軍刀を置いて寝るかは理解し難いが、私には都合が良かったのは確かだ。
難無く軍刀を手に入れた私は、鞘から抜き暫く眺めた。雲の白さがはっきりと判るそんな夜で、じっとりと蒸し暑かった。夜中と云うのに蝉はじわじわ鳴き、正直馬鹿じゃなかろうかと感じた。
痛いだろうか、そう考え、軍刀を持った侭一時間経った。首に汗が流れ、手が湿る。全く音がしなくなり、完全な“無”の状態になった事を知った私は軍刀を自身に向けた。止めてくれ、と女の自分は悲鳴を上げ、鈍痛を教えた。其れが憎らしく、其の元を刺した。
ずぶりと不思議な感覚がし、抜いた。又在の鈍痛に襲われ、掻き消す様に何度も刺した。足の感覚が消え、床に倒れ込む時、私は何故か、漆黒の髪を見た。私の髪は短く、そして漆黒では無い。其れがはっきりと、靡く漆黒の髪を見たのだ。
一体何であるかも判らず、けれど私は笑った。
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