サンタの贈り物


マミィに会いたいと云う願いは、確かにした。けれど、あたしはこんな場所に居る母親に会いたい訳では無かった。
大嫌いなロンドンの大嫌いな家。クリスマスだから、誰も居なかった。
ヒールの音がして、あたしは反射的に身が縮まり、声が出なくなった。あたしを探す其の声も大嫌い。
あんたの全てが大嫌い。
其の奇麗な髪も、身体も、何もかも大嫌い。
来ないで、そう強く手を握り合わせた。

「ハニー。」

其の顔に、涙が出た。
ずっと、ずっと、ずっと会いたかった。

「マミィ………」
「いらっしゃい。」

しゃがんで膨らんだスカートに両腕を広げて、大きな大きな羽を見せてくれた。
其処はもう大嫌いなロンドンでも、寒い在の家でも無く、真白な何も無い暖かい優しい場所だった。
あたしが飛び付くと、ぶわあっと白い雪が舞い上がり、けれど冷たくは無かった。
あんなに話したかったのに、泣き声しか出ない。其れでもマミィは、良いのよって、ずっと抱いて居てくれた。
甘い梔子の匂い。凄く良い匂いだった。

「琥珀、琥珀。良く顔を見せて。」

マミィの暖かい手はあたしの髪と顔を弄り、マミィはやっぱり、写真と同じ顔だった。

「大好きよ、マミィ。」
「マミィもよ、愛してるわ。」

マミィは泣いて居た。
本当に抱き締めてあげれ無くて御免ね、と。でも、あたしには此れも本当だった。

「泣かないで、マミィ。」
「優しいのね、貴女はとっても優しい子。だから、皆に愛されるわ。」
「ダディにも?」
「ダディが琥珀を愛さなくなったら、マミィがダディを愛さないわ。」

あたしは笑って、マミィも笑ってくれた。

「マミィは何時も、琥珀の傍に居るからね。」
「本当?だったら又会える?」

マミィは視線を落として、息を吸うと額にキスをくれた。

「ええ。でも、御約束があるの。」
「何?」
「マミィの代わりにダディを、沢山沢山、たっくさん愛して。そして、本の少しで良いの。マミィの事も愛して。そうしたら。」
「そしたら?」
「毎年此の日、必ず会えるわ。」

小指と小指を繋いで、約束ね、とあたしは潰れそうな程強くマミィを抱き締めた。
マミィ、マミィ。大好きよ。
何度も云った。
暖かい空気に包まれて、暑いとさえ思った。息苦しく、目を開けたら目の前にアレキサンドリアが居た。

「鼻、塞がないでよっ」

布団と一緒に跳ね退け、真横でダディが動いた。

「今…何時だと思ってんだよ…うるせぇなぁ……」

丑のナンチャラで不吉だった。琥珀もダディも目が覚め、外は青白く見えた。琥珀は今見た夢を思い出して笑い、嬉しさを分けてあげ様と腕の中に潜り込んだ。

「ダディーっ」
「はっはあん。龍太の夢でも見たのか?」

琥珀の初恋がリュタなのは、ダディに完全にばれて居る。けれど今一番好きなリュタより、もっと大好きな人に会えた。

「マミィのコエネぇ、セクシー。」
「嗚呼。…………ん?」
「オヤスミィ」

何処で聞いたと身体を揺するダディを無視して、笑って寝た。




「だからあたしはクリスマスが大好きよ。マミィに会える日だからね。早く帰って寝たいわ。勿論、子供達と一緒にマミィに会いに行く為よ。」




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