ギザギザハートの子守唄


貴女を初めて見たのは風薫る五月の頃でした。
貴女は覚えていらっしゃら無いでしょうね、だってワタクシが一方的に見止めたのですから。
ワタクシは未だ学生で、丁度思春期でもあり世間を舐め腐っておりました。世の中は下らない物で創造されて居ると信じ、神が創造したとは微塵も思えなかったのです。
白い学生側を着たワタクシは、十五で奇人と呼ばれました。
ナイフみたく尖って居た積もりは御座居ませんが、周りは確かに傷付けて居た様感じます。
ワタクシを判って貰おう、等とは思いませんが、果たしてワタクシ、そんなに悪いのでしょうか。
見抜かれた野心は縛られ、夢は机に向かう度削り落とされました。
天才も、二十歳過ぎれば唯の人―――少なからずワタクシは焦って居たのでしょうね。普通に為る事が。其れは怖くないと、子守唄の様に、貴女は尖ったワタクシの心に語り掛けたのです。




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