女だった頃


「…………っ…」
身体がびくりと跳ね、雅は夢から目を覚ました。
何と、懐かしい夢を見ていたのだろう。
「如何しました?雅。」
兄の声に雅は首を振った。
「いいえ…」
何故、こんな夢を見てしまったのだろう。記憶の引き出しが勝手に開いたのだろうか。
雅は顔を擦り、息を吐いた。そうして頬に触れた何か。其れが何か、雅には良く判らなかった。
そうして、思い出した様に、兄が云った。
「最近雅は、髪を切りませんねぇ。」
そうか。頬に触れたのは、髪だったのか。そう云えば、随分と切っていない気がする。
だから、だろうか。
あんな懐かしい夢を見たのは。
雅は勢い良く腰を上げ、ドアーに手を掛けた。
「何処へ?」
「切ってきます。」
「行ってらっしゃい。」


髪の綺麗な女は、良い女の証拠だ。


今の私は、なら、違うわね。




*prev|2/2|next#
T-ss