加虐ナ貴方、被虐ナ私
荒く息をする雅の姿を、拓也は笑い、見た。楽しくて、仕様が無い。微かに震える身体に、人差し指で爪を立て、線を描いた。首筋から、乳房を回り、臍を触る。其の度、雅の身体は大きく震えた。
「く…はは…」
声を出し笑う。
「こんなに俺を楽しませて、如何するのよ。何がしたいの。何が御望みよ。」
虚ろな雅の視線に、拓也は又笑う。
知っている。如何して欲しいのか。聞いて、してやる程、拓也は優しくは無い。
「うつ伏せになって、そう。良い子だな。」
力の入らない身体を動かし、うつ伏せになる。される事を考えただけで、此の快感。実際にされたら自分は如何なってしまうのだろうかと雅は、喉を鳴らした。
「腰高く上げて。そう、嗚呼、良い眺めだな。絶景かな絶景かな。何てな。」
「拓也、さん…」
何時迄も話す拓也に、雅は不安を覚えた。
腰に触る冷たい手。背中に鳥肌が立つ。背中に拓也の体温を知り、肩に髪が掛かり、耳元で声が響いた。
「知ってるか。」
「何を…」
「絶頂ってのはな、一度目より、二度目の方が、凄いんだぜ。三回目になったらな、もう訳が判んなくなって。だから、二回目が、一番気持良い。」
耳に篭る息。拓也が何を云っているか、雅には判った。恐怖を感じたが、其れよりも快楽の方が勝り、知りたいと思った。
身体を離し、拓也は少し頭を振った。頭に靄が掛かり、一瞬視界が悪くなった。
「如何か、されましたか…」
「いや…何でもねぇ…」
心配を向ける雅の視線に、情けないと、拓也は思った。
「あー…やべぇ…すっげぇ気持良い…」
「…え。」
何を云っているんだ、と雅は少し理性を引き戻した。本当に此の人は大丈夫なのだろうかと。入れもせず、唯眺めるのの、何が気持良いのだろう。
「俺って、セックスに関しては、すげぇ女寄りな…」
感心した様に呟く。そうして、硬さを無くした自身を見詰めた。欲を出したから、硬さを無くしたのではない。頭の中で、強烈なオーガズムを知り、硬さを無くした。雅が乱れる程、頭の中に靄が掛かる。雅が絶頂を知った時、拓也も絶頂を知った。
「女は、頭で絶頂を迎えて、男は身体で絶頂を迎えるって云うけど、俺は如何考えても頭でイッてんだよなぁ…」
天井を見上げ、呟く。
「頭がおかしいからかな…」
「拓也さんがおかしいのなら、私は如何なりますか。」
自分は大概ではないか。男の恰好をし、男と生き、女と寝、そうして拓也に抱かれる。其の矛盾が可笑しくないと、誰が云える。
「まぁ、良いか。」
笑い、思い出した様に雅の足を触った。後ろから秘部を舐め、又互いに快楽を与え合う。膣に入り込む拓也の舌。突起を触る指、荒い息。恥ずかしい此の体勢は、充分に雅の理性を消した。乱れる姿に、雄が嗤う。
云われた通り、先程の快楽より、強い快楽が雅を犯す。もっとずっと深く強い快楽。息が出来ず、眩暈がする。快楽による眩暈なのか、酸欠による眩暈なのか、最早判らない。唯其の息苦しさが、心地良かった。
足から力が抜けそうになるが、拓也が其れをしっかりと固定した。
「嗚呼、もう駄目…又…」
「強烈だろう…俺もやばい…ちかちかしてきた…」
拓也としている筈なのに、何故か女としている気分になる。矢張り、女寄りなのだろう。咥えていた時に覚えた違和感は、此れだったのかと、雅は息を吸った。
「いきます…」
「嗚呼…良いぜ…」
掠れた其の声に、雅は二度目の絶頂を迎え、其れは強烈だった。どっと身体から汗が吹き出、身体を湿らす。膣が痙攣するのが判る。拓也の腕が離れ、足がきちんとベッドに沈んだ。
体温。
拓也の其の体温に、驚きが出る。
こんなに、熱い。硬さを戻した其れの様に、熱い。又腰を持ち上げられ、人形の様に腕が動いた。
「しっかり力入れてろ…」
伸びた腕に拓也の手が重なる。きつく握られ、膣に指とは違う圧迫を知る。熱い其処に、熱い塊が入り込む。全部入れ込んだのか、背中に拓也の体温を感じた。耳元で繰り返される吐息に、快楽による眩暈を知る。暫く動かず、互いに熱を楽しんだ。
此の快楽を、独り占めしたい。
娼婦が拓也に熱を入れるのも、無理は無いと、雅は思った。此処迄女を喜ばせる男も、そう居ないだろう。己の欲だけを吐き出す客相手の娼婦なら尚更。
愛してくれているのだと、錯覚してしまう。
愛の無いセックスで得られるのは、身体の快感。決して頭で感じる事は出来ない。なのに、なのに何故自分は、こんなにも狂うのだろう。矢張り其処に、拓也に対する愛があるから。
愛してくれなくても良い。自分は、愛するから。其れだけで、強力な快楽を知れるから。
「拓也さん…愛しています…心から…」
「知ってるよ…」
光源氏みたいな人、雅はそう思った。
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