加虐ナ貴方、被虐ナ私
女とは全く違う味に雅は眉を顰めた。けれど決して嫌な事では無かった。舌を動かす度、咥えている物が動く。自分の与える刺激に素直に反応する。何と楽しい事だろうと雅は思った。
「うん。やっぱ上手だな、御前。」
誰と比べているのか、拓也は笑みを零す。けれど決して息は乱れず、規則正しく呼吸を繰り返す。
「女も男も、大して変わんねぇだろう。」
変わる、そう云いたかったのだが、口一杯に拓也の性器を含んだ雅に、声を出す為に口を動かす事は出来無かった。出来るのは、少しばかりであろう快楽を、与える事だけ。とくんと又膨らみ、雅は興奮を知る。
しかし。
「もう良いわ。」
退屈を思わせる息を漏らし、拓也は雅の口から抜き出した。硬く張り詰めている筈の其れは、何故か自分の唾液でしか濡れていない事に、雅は気が付いた。此れが、男というものだろうかととも思ったが、何だか違う気がしてならない。あの独特の味は、一体何処から来たのだろう。
自分の唾液が顎を伝い、拓也の顔を見上げる。笑っている。拓也は確かに、とても楽しそうに笑っている。
咥えていただけなのに、秘部が濡れている。雅は其処に自分の指を置き、確認した。拓也を受け入れるには、充分な濡れ具合だ。
ベッドに腰掛けている拓也の両肩に手を置き、雅は跨った。動く視線。
「何してんの。」
怒りを孕んでいる様にも取れる拓也の声。笑みは、無い。
「入れますね。」
そう云った雅に、拓也は視線を逸らし溜息を深く零す。顔に掛かる前髪を掻き上げ、煙草を咥えた。
「俺、馬鹿にされてんのか。」
「何が、です。」
ゆっくりと紫煙を吐き、灰を落とす。
「俺が何でセックスが好きか、判るか。」
「…いいえ。」
気持が良いからではないのだろうか。入れ、動き、欲を出す、其の行為が好きなのではないのか。そう思っていたのだが、如何やら違う様だ。
雅は、上がる紫煙を暫く見詰めていた。半分無くなった所で、紫煙は消えた。
「女の顔が、快楽に歪むのが好きなんだ。つまりだ。」
跨っている雅の身体をベッドに沈めた。両手首をベッドに沈められる快感。
「楽しませて、くれるだろう…雅。」
吊り上る口角。其れをはっきりと知る。口角が上がるのと同じに、自分の足も上がった。
太股に這う熱い舌、冷たい唇、擽る髪と息、細い冷たい指。拓也の全てが、雅を熱くさせる。
狂う。
拓也の全てに、自分は狂う。
膝を舐められる感覚に、秘部が濡れを増す。
「何時も思うけど、御前足綺麗だな。」
「そう…かな…」
「嗚呼。」
執拗に這う舌。
「足だけじゃねぇよ。顔も、髪も、身体も、御前は全部が綺麗だ。」
そうして、拓也はやっと雅に乱れた息を伝えた。咥えられても規則正しい呼吸を繰り返す拓也が、だ。足を貪る拓也の顔は、快楽に歪んでいた。普段寄る事の無い眉間に、深く皺を作っている。
舌が這った所に空気が触れ、寒さを感じる。
「拓也、さん…っ」
太股を舐め、其の動きで髪が秘部に触る。微かな刺激に、雅は声を荒げた。
止まる動き。膝に手を置き、近付く顔は、笑っていた。
「如何して欲しい。」
此の顔。快楽と加虐に興奮する、雄の顔。唇を舐められ、雅は小さく悲鳴を上げ、身体を強張らせた。其れだけで、絶頂を向かえそうだ。
「キッスを、キッスをして…」
「其れだけで良いのか。」
違う。本当はもっと触れて欲しい。濡れる秘部に、強烈な快楽を与えて欲しい。けれど雅には云えなかった。羞恥は、未だ残っている。
獣に成り下がるには、未だ早い。
唇だけが触れる口付けに、雅は震えた。膣が収縮を繰り返し、中から大量に液を送り出す。厭らしく唸っている。雌が。
煙草の味が口に広がり、拓也の首に腕を回し、貪った。水音を立て、貪った。
早く、早く突いて。
そうして欲を、吐き出して。
頭の中で考え、其れを伝える様に、舌を絡ませ、腰を摺り寄せた。動く拓也の視線。
「だからね、俺は入れる事が目的じゃねぇんだよ。頭悪いのか。」
「嗚呼、もう良い。馬鹿でもなんでも良い…早く入れて…」
「やだよ。俺楽しくねぇじゃん。」
顔を離し、未だ触れていなかった乳房に舌を置いた。上を向く乳首を何度も転がし、歯を立たせ、吸う。其の度、厭らしい水音が響いた。乳首が拓也の舌で動かされるのがはっきりと判り、羞恥を知ったが、見せ付けられる度、羞恥という快楽が雅を犯した。
子宮は無い筈なのに、確かに其処が疼く。疼いているのは、傷跡だった。
胸から頭が離れ、漸く望んだ場所に向かう。雅は震えた。
「嗚呼、勿体ねぇ…」
傷跡に唇を落とし、赤い痕を付ける。
「自分の子供は要らねぇけど、御前の子供は欲しかったなぁ。きっと美人だぞ、御前に似て。」
「其の場合、父親は…」
合う視線。優しく笑っている。
「俺が良いんだろう。」
素直に頷いた。拓也以外、考えたくない。視線を逸らした時、秘部に冷たい息が掛かった。
やっと、やっと獣に成り下がれる。早く、理性を飛ばして欲しい。
「はっあ…っ」
溢れ出る液を掬う様に動く舌。冷たい指が添えられ、突起を主張させる様に広げた。
「っあ…ん…」
突起が熱い舌に動かされるのが、はっきりと判る。突起の周りを舐め、其れ自身にも触れ、突起の動きが判る。溢れる液が、下に迄伝うのも、判った。
「おやまあ…」
拓也は喉の奥で笑い、雅の一番嫌う人間の口調を真似る。
一度、酷く其れを嫌がった事がある。そうしたら、案の定、其れを定着させた。
「雅ははしたないですねぇ、全く全く…」
最近は、声色迄似始めてきた。妙に甲高い、あの声。顔が浮かびそうで、嫌だ。けれど、微かに残る、拓也の声の特徴とも云える掠れに、雌は反応を示す。
「雅は、此処を、こうされるのが…御好きでしたねぇ…」
強く突起を吸われ、引き千切られるのではないかと錯覚する。痛いのに、酷く快楽を得る。吸った侭動く舌。時折当たる歯が、云い様の無い快楽を与える。
「っつああ…っ」
冷たい指が、熱い中に捻じ込まれ、雅は目を見開いた。一本だった指が二本と増え、外と中で、快楽が身体に這う。
狂う。
そう思った時、雅の理性は、完全に消えた。
獣に成り下がった声を荒げ、快楽を貪る。其の声に、拓也の理性も、消えた。
「そうだ…もっと乱れろ…俺を楽しませろよ…」
低過ぎてなのか、掠れ過ぎてなのか、呻いた拓也の声は良く聞こえなかった。けれど、雅の雌にはしっかりと拓也の雄の声は伝わり、其れに応える様に液を垂れ流した。
背中に、虫が這う。逃げ出したくなる程の快楽に、雅は声無く身体を痙攣させた。がたがたと震える足に、拓也は手を置き、知れず口角を上げた。出ではいないが、確かに喉の奥で笑っていた。
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